「君は、天使なの?」

何度か顔を見たことがある(その回数だけ体を重ねた)男が問った。

「違うよ」

即答する。直観的な答えだった。
「……天使が何だか、知ってるの?」

男が優しく微笑んで(それは哀れみだったかもしれない)そう聞いた。

「……あれ、なんだったかな?」

はっきりと違うとわかったのに、天使が何を指すのかわからなかった。

「可哀想な子。」

男はそういって自分を抱き寄せた。そうしながら、快楽の海へ堕ちていく。(そうするのか一番楽なのだとわかっていた)



毎日違う男がやってきた。

酷くあたる男も居た。泣きながら縋りついても許してもらえず、何度も何度も打たれることもあった。(それでも、翌日には傷一つなく治ってしまうのではあったが。)


何かの薬を飲まされて、翌日は指一本動かせなくなるまで泣かされたこともあった。


女主人は初めてみたよりずっと老けた。


自分の顔を見ることはなかったけど、なんだか自分の時の流れがおかしくなったような気がした。


どうして、何故。疑問は渦巻いては思考の奥底へ、堕ちていく。

考えても無駄だ、と言うことは経験上よく知っていた。




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