ぽっかりと目を開けた。
全身が重かった。腕をあげることすら億劫で、考えることも面倒だった。
いつもの部屋、いつもの寝台。
隣に誰かの温もりはない。
(当たり前だ)(本当にそれは当然なのか?)
重そうな扉(必ず、鍵が掛かっている)(自分は、そこまで行くことすら出来ないのに)と廁と風呂のある簡素な扉以外に、一つだけ格子のついた窓があった。琥珀のはめ込まれた窓から光が差し込んでいて、あぁ、もう昼頃なのか、と思った。
青空が見たい、と思った。(自分は空をみたことがあるのか。)(いつ?何処で?)
空が飛びたい、と思った。(空なんて、飛べるはずがないのに。)
女主人が、騒いでいる。
誰か(顔も見たことがない)が甲高い声で喚いた。
日常になってしまった目覚め。
(以前は日常ではなかった?)
もうじき、誰かが来て、吐冩物によく似た食物を自分に差し出すのだ。(食べなければ、口のなかにねじ込まれる。)
髪を引っ張って引きずり起こされる前に起きておこうと思った。
じゃらり、と手足に絡み付いた鎖がなった。
こんな鎖その気になれば簡単に引きちぎってしまえるような気がした。(そんなはずないのに。)
自分は、ここにいる前は何処に居たんだろう。
少なくとも、青空ね見えるところに居たことは確かなのだけど。(そうでなければ、こんなに鮮明に焼き付いているはずがない。)
何故か頭が痛くなって考えるのを辞めた。
足音が近づいてくる。
さぁ、地獄の始まりだ。
ここ以外のことを覚えていないけど、ここが地獄だということは知っていた。
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