誰よりも早く空をかける。妖魔も追っ手も、何もかも切り裂いて進む。


夜は野木の下で眠った。里に下りて服を普通の服と取り替えた。勿論怪しまれたが、彼らは欲に負けて、見るからに高価な服と、彼らの服を取り替えた。


3日飛び続けて、奏へと着いた。


ずっと前に王をなくした奏は巧よりもずっと荒れていて、妖魔がはびこっていた。


海に着いたときを狙って襲ってきた妖魔を全て切り殺したために、青いはずの海が真っ赤に染まっていた。


夕焼けが赤いのか、血の色なのか、区別がつかない。


視界のすべてが赤かった。


「見て」

腕のなかのひとに言うと、彼は少しだけ笑って(死斑だらけの顔)綺麗だ、と言った。



塩が満ちてくる。


このまま海に飲まれたいと思った。

もう、力は残っていなかった。



故郷に残してきた人に、ごめんなさい、と謝った。

(届くと信じて。)




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