そんな日がずっと続いて、朔掩は逃げる気力を失いつつあった。
こんな風だっただろうか、と朔掩は思いながら空を見た。


眩しい程の、青空だった。





かたん、と扉が開いた。


こんな時間に誰だろうか、と朔掩は思った。



王だった。



その手には麒麟の首があって、もう片方には血に塗れた剣が握られていた。


あぁ、おわったのだ、とぎらぎら光る、血に濡れた剣と、同じ色をした鋭い瞳を見ながら思った。


両手を広げて(声はでないから)呼んだ。

それを見て、肩の力を抜いた王に、朔掩は抱きつかれて押し倒された。

胸の上にのった頭を撫でながら、朔掩はぼんやりと空を見上げた。


喉についた封印が抱きつかれた拍子に取れていた。

青空を見上げて、ぁあ、自由になりたい、と思った。

ふたりして自由になれたらどれだけ素晴らしいことか。


「Freedom」



朔掩は呟いた。


刹那、視界が真っ白に染まった。


音が聞こえる。人が近づいてくるのがわかる。


その前に

「逃げよう。一緒に行こう。」

体を起こして、首をかしげた男を抱き締める。


「ここは、君には辛すぎるから。行こう。」


背中が熱くなる。

久し振りの感触。


「南へ行こう。」


桜耶と行けなかった南。

そういいながら、朔掩は自分の羽をばさりと音を立てて広げた。



落ちた剣を拾う。

血に濡れたそれは、しっくりと手に馴染んだ。



「さぁ、行こう。」


体重は感じない、どこまでだって飛んで行ける。



扉が開いた。剣を持った兵士たちが茫然としてこちらを見た。


「この人は、僕がもらうから。」

朔掩は笑った。

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