思ったよりもずっと、連れ戻されるのは早かった。

二度目に降り立った町で、朔掩と桜耶は捕まって、王宮に送り返された。


「逃がさないよ」

朔掩を鎖でつないで、王はこういった。

その朔掩の目の前に、桜耶が引っ張ってこられた。

桜耶は仙であることか裏目に出て、致死量とも言える傷でずたずたになりながらも生きていた。

「見て御覧よ。これが朔掩が逃げた結果だよ。」

ずたずたになりながらも笑って見せた桜耶の首を切り落として、王は笑った。


「……僕は、天使じゃないよ……、自由に飛べる羽もない、僕は君に何もしてあげられない。」

朔掩は泣いた。

泣き出した朔掩に王は泣くな、と言った。


「私は君が居てくれるなら他には何もいらないのだから。」


王はそういって、朔掩の言葉を封じた。

桜耶がもってきた本は全て処分された。

朔掩を見ると、女官は目も合わさずに逃げていった。
朔掩も女官に声をかけようとは思わなかった。



呪縛だった。


血の色をした呪縛。




逃走事件を切っ掛けに、王は朔掩を抱くようになった。

肉欲に溺れるとはこのようなことを言うのだろうと朔掩は思った。


際限なく求められて、次の日には指一本動かせなくなる。

思考がどろどろに溶かされる。





PREV(9/12)NEXT