ある日を境に、王は後宮に入り浸るようになった。
官が入ってこれないことをいいことに、人払いして、麒麟が業を煮やして、迎えに来るまで王は朔掩のそばにいた。
特に何をするわけでもなく、王はただ、朔掩にどうすればいい?と聞いた。
朔掩がそんな答えを持っているはずがなかった。
「僕は、僕が官吏になんて言われてるか知ってるよ。」
朔掩が言った。
「朔掩は天使だよ。僕の天使だ。」
王はそういった。
「僕は、君に何を告げてあげることも出来ないよ。君には君の天使がついているだろう?…そう、君の半身のことだよ。」
「そんな言葉は聞きたくない。」
王はそう言って、ただただ、無言で朔掩の傍に座り続けた。
「僕はここを降りたほうがいいね。……仙籍を外されて、言葉が通じなくなったら面倒だけど。」
朔掩は桜耶に言った。桜耶はそれに同意した。
「私がついていくわ。責任を持って国外に送り届ける。」
桜耶が言った。
「わるいね……君には面倒をかけっぱなしだ。」
「いいえ。貴方に会えて、よかったわ。」
桜耶が笑った。
心は決まった。
桜耶と朔掩は、騎獣を厩から拝借して、夜の帳へ身を投じた。
PREV(8/12)NEXT