プレイション


※暴力・ちょっぴり性的


興味本位だった。一度くらい女を試してみたい、そんな軽い気持ち。

俺だって男なのだ。抱かれることに慣れてしまっているけど、性別は確かに男で、本来なら女を抱く筈なのだ。それが自然なのだから女を抱くことくらい、俺にも出来ると思ったのに。


「お前、なに考えてんの?」

どん、と自分が壁にぶつかる音がした。背中が痛い、なんて抗議は勿論出来る筈もなく。不満げに土方さんを見つめると、チッと舌打ちだけが返ってきた。
そして土方さんは更に俺の頬を叩いた。ばちん、と小気味の良い音と共に左頬がじりじりと熱を帯びる。ああ本当に怒ってるみたいだ。土方さんが俺を殴るなんて、よっぽどのことだから。どんなにぶっとんだ悪戯を仕掛けても、殴られることなんてなかったのに。

「花街なんて行って、なに考えてんだよ…!」

土方さんはドン、と今度は思い切り壁を叩いた。安いホテルの薄い壁だ、きっと隣で宜しくやっていた客は驚いているだろう。それを想像したら少しだけ面白い気も、する。

「…別に、ちょっと試したかった、だけ、ですよ」
「は?」

なんとも無表情で返されて、柄にもなくびくりと肩を震わせた。本気だ、本気で怒っている。こんな土方さんは見たことがない。

「お前女がよかったわけ?」
「そういう訳、じゃ…」
「じゃあなんだよ!」

どん、と押し倒されれば、そのまま。抵抗して良いのかも分からないし、抵抗したところでまぁ、無駄だろう。残念なことに刀が無いと俺は土方さんに適わないのだ。それにこの件に関しては完全に俺が悪いと分かっているから。
ああでも、せっかく柔らかいベッドがあるのに床に押し倒されるのもなぁ、なんてこの場に相応しくない事を思った。行為に及ぶ為に押し倒されたんじゃない、怒られているだけなのに。どうやら俺は思ったよりも重症らしい。女を抱くなんて、ああそれこそ馬鹿な考えだったのだろうか。さてこれから、って時に土方さんがまさしく鬼の形相で飛び込んで来たから、結局何も出来なかったけど。

「何で今更女なんだよ」

ぐい、と髪を掴まれて答えを求められる。抑揚の無い声と暴力的な行為、それに瞳孔の開いた瞳はまさしく危ない人だった。ああなんて答えれば良いんだろう、なんて思いながらも、言い訳なんて無いし出来ないのだから。

「…何でって、俺だって男ですぜ?ちょっとくらい、試しても良い、だろィ」
「駄目だ」

そう即答されて、強引に唇を奪われた。土方さんから強い煙草の味が伝わってくる。ああこの人、俺を捜している間に何本吸ったのだろう。考えると少し、楽しかった。

「お前は、こっちだろ」
「…え、ちょ、うあっ…!」

突然襲う痛みに、思わず眉を潜める。ああこの感じ、指2本は入ってるんじゃないだろうか。女じゃないのだから、慣らして貰わないと困るのに。無理やり入り込む土方さんの指が窮屈で痛くてどうにも力が入ってしまう。そうしたらもっと痛くなるのに、しかしそうせずにはいられない。それでもお構いなしに土方さんの指が俺の中を駆け巡って、しまいには指を増やす始末だ。ああ痛い、痛いのに。

「勃ってんじゃん」

どうして、なんて分かっているのだ。全部、全部土方さんのせい。土方さんが俺をこんな風にしたんじゃないか。ああムカつく、誇らしげに笑いやがって。

「わかる?お前こっち専門だから。もう馬鹿なこと考えるなよ」

とても酷いことを言われているのに、どうして俺は納得してしまうのだろう。違う俺は女だっていけるんだ、それは建て前なのかもしれない。だってこうして酷くされてるのにやっぱり気持ち良いのだから。

ああしかし必死だなぁ土方さんも。きっと俺が女を抱けない人間だと思いたいのだろう。そう思ったらやっぱり楽しくて、土方さんに気付かれないように小さく、笑った。


end


浮気するくらいなら最初から俺のものになるな、女が良いなら最初言えば良かっただろ言わなかったんだからもう絶対女なんか許さねぇっていう土方さん。

(111116)

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