手のひらと興奮


!暴力・ちょっと性的

疲れていた。突き詰めてしまえばそれだけなのかもしれない。しかし、総悟も悪いのだ、とも思う。こうして夜中まで書類と向き合ったのは、限度を知らない子供のせいじゃないか。破壊活動に勤しんだ総悟の尻拭いをして、それなのにバズーカ片手に襲撃をかけられれば、誰だって怒るだろう。確かにいつもの事ではあるが、今日は本当に疲れていたのかもしれない。

ぱしん、と皮膚を叩く音が部屋に広がって、すぐに消えた。じんじんと手のひらが熱を帯びる。はっ、と我に返った時には遅かった。殴ってしまったのだ、総悟を。

総悟はただでさえ大きな瞳をまん丸にして、固まっていた。殴られるなんて思ってもいなかったのだろう。俺だって総悟を殴ろうなんて思ってなかったのだから。しかしお前が悪いんだぞ、と心の中で言い訳をする。


白い頬がみるみる紅くなって、衝撃に驚いたのか瞳に僅かな涙の色を浮かべていた。なんだこれは、総悟なのか。そう思うくらいに、目の前に映る子供は儚げだった。総悟が怪我をするところなんて沢山見てきた筈なのに。自分の手のひらがあいつの白い頬をじんわりと染めているのだと思うと興奮した。なにより、あの総悟が、頭を真っ白にして慌てている様子に、酷く興奮を覚えたのだ。ドSは打たれ弱い、自ら言っていたことは真実だったのかと感動すら覚える。

「え…?土方、さん?」

俺が殴ったことが相当衝撃的だったのか、総悟は叩かれた頬をそっと押さえて、動揺の声を出した。しかし無表情でいる俺に、総悟は更にあたふたと戸惑い始める。

「あれ…なんか今日、機嫌でも、わりィんですか…?」

普段の総悟なら、何をするんだ、と文句の一つや二つとんでくる筈なのに。俺がいつもと違った態度だからなのか。面白い、と思った。いつも飄々とする総悟の取り乱すような姿が、もっと見てみたいとも。ああ本当に今日は、疲れているのかもしれない。

もう一度、今度はもう少し力を込めて、総悟の左頬を弾いた。ぱしん、と相変わらず気味のいい音がして、その衝撃に総悟は畳に転がった。倒れ込んだ総悟を上から押し付けて、両腕を掴んでみる。すると総悟は小さく声をあげて、涙を溜めた瞳で見上げてくる。

そしてふと、思った。この子供を犯してみたらどんな反応を示すのだろうと。

殴ってみれば、それはそれは楽しい反応が返ってきた。自他共に認めるドSが、殴られてきょとんと涙を浮かべる様は、俺にとって興奮に値するものだ。

それなら、体中を愛撫してみたらどうなるのだろう。びくりと体を跳ねさせて、快感に身を擽るのだろうか。あの、総悟が。甘い喘ぎを吐き出して、精液を撒き散らすのか。そう考えたら、たまらなくなった。酷く興奮したのだ。今日は本当にどうかしている。俺はホモになった覚えなどないというのに。しかし、性を感じさせないこの子供の、快楽に歪んだ顔を見てみたいと、心の奥底から思ってしまうのだ。

「えっ…うぁっ?!」

試しに総悟の首筋にかぶりついてみた。舌を這わせて、白い肌をずるりと舐めまわす。すると総悟は擽ったそうに、しかし色の帯びた吐息を漏らした。

「な、に…してんですか!」

総悟の声は無視を決めて、今度は単を割って胸元を晒け出す。ひいやぁ、と色気のない声を出してはいたが、動揺しているのは明らかだった。

勿論ふくらみなど全くないそこに、唇を寄せる。瞬間ぴくり、と反応するものだから、俺はますます興奮を覚えてしまった。感じてる、総悟が。ああこいつも感じるんだ。性欲というものがあるのだ。淡泊そうに見えても、こいつだってきっと自慰くらいしている。そんな当たり前の事に、俺はますます興奮してしまった。

「ひっ土方さん何…!アンタおかしっ…うあっ」

白い喉元を晒して快感に耐える姿に、俺は知らず知らず口元に笑みを浮かべていたらしい。何笑ってんの、そう涙目の総悟から告げられて、初めて気づく。しかし、楽しいのだ。男を、同性を組み敷いているだけだというのに。

「女と、勘違いでもしてんですかィ…!」

そうなのだろうか、と素直に考えみた。なぜ弟のような存在である総悟に、こんな仕打ちをしているのか。そして何故それに興奮を覚えているのか。総悟がいつも見せない表情や態度が、俺にとって楽しいものだったからだ。もっと見たい、こうしたらどうなるのだろう。そんな思いに、支配されたのだ。だから女なんかと重ねている訳では、ない。
じゃあ、と。それなら俺は、何故総悟に興奮を覚えたのだろうか。それってもしかして、俺は。ああそうか、もしかしなくても、俺は総悟の事が。

「好きだよ」


end

すっごい楽しかったです(…)暴力好きだったりする。

(110518)

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