未完成 | ナノ
ジョルノとミスタ
あのころから変わらず、彼は角砂糖をみっつと多めのミルクを入れたコーヒーを好んだ。スプーンでかき混ぜ、一瞬にして夜が明けるコーヒーを見たのはこれで何度目かすら分からない。
僕らは、音もなく歳をとった。
既に彼好みのものへと変化したコーヒーと、いまだ夜を湛えたままのコーヒーを手にした彼がやって来る。走らせていたペンを置き、コーヒーを持った彼の方へと向くと、あのころから何も変わらない無邪気さをいっぱいに含ませた笑みを浮かべている彼がいた。僕を労うことばと共に、甘さがこぼれおちるキスが頬へ寄せられる。黒々とした睫にやさしく縁取られた深い黒色、それこそ夜を湛えたコーヒーのような色をした虹彩のおおきな瞳。そして上下の睫がからみあうように笑む彼が、僕はいつからか忘れてしまうほど前からたまらなく好きだった。
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