イライラするんだ。媚を売ってきて、僕に命乞いをしてごらん。そうしたら、僕はしょうがないななんて圧倒的に優越した立場に酔い浸り、愉悦の笑みで言うんだ。だけど、ナマエときたらどうだ。「命乞いをしたって殺す癖に。どうせ同じことだよ」と僕を睥睨して言うんだ、なんて反抗的で可愛くないんだろうって僕は思ったね。僕は何度も脅す、僕が飽きたら君は死ぬ運命にあるんだよ。僕って飽き性だからさ、何人殺したかとか、一々数えるのだって面倒くさいし、古臭い人間の名前だって一々覚えていないんだって話せば「サリューって悲しい人だね」と哀れんだように呟いた。僕は激昂したのを覚えている。僕の何処が可哀想なんだってね。



「早く飽きればいいのに」独り言のように僕が呟いた。一向に飽きる様子が無いのだ、人間なんて三日、いや、酷い時は一日、数時間で飽きてしまう。それくらいに酷い飽き性なのだ。なのに、もう既に一か月を過ぎているじゃないか。こんなにもったのは、初めてだなとロデオももの珍しそうにナマエに視線を滑らせた。それから、数秒で興味を失くしたかのように「別に特殊な所なんて無いじゃないか。今までだって命乞いをしなかった人間だっていただろう」「そうなんだよね。まあ、そんなの一握りもいないよ、大体はその途端に成ると泣きわめきながら殺さないで!なんて言うんだ」僕はその瞬間が好きだった。王様、果ては神様に成ったような気にすらなったのだ。



心臓を弄び、好きな時に握り潰しては生かすも殺すも決められる邪神なのだ。僕は見たくてたまらない、だけど、彼女を殺すのも泣き叫びながら命乞いをする姿も見たくないという気持ちがあってそれが、葛藤して拮抗しているのだ。可笑しな話である。「僕の大事な大事な玩具だよ、君ってさ」ぞくぞくするんだ。君の泣き叫ぶ姿を想像するだけでさ、鼓動が早く成る気がするんだ。震えて顔面をその涙と鼻水でぐしゃぐしゃにして、僕の足元に縋りついて、それから「殺さないでサリュー」なんてね。



「やってみればいいんじゃないの」そうしたら、きっとお望みどおりに成ると思うよ、そうやって煽るように嫣然と笑うナマエが憎くもあり愛おしくもあった。「おもちゃって大切にとっておくほうかい?僕はね、そんなタイプなのかもしれないな」ぬいぐるみ、タオルケット、玩具の車、何でもいい。それをずっと手放せない大人の様なのかもしれないなと自嘲気味に言ってみた。「……成る程、素敵でわかりやすい表現ね。私もそうかもしれない」「つまり、僕は君を飽きるまで……もとい飽きるかわからないけれど、それまで手元に置くことにしたよ」



異論はないね?なんて一応同意を得ようとしたけれど考えてみればナマエは頷くしか選択肢が無かったんだったなんて思った。ああ、わかっているさ。これは自己満足の自答自問に近いのだ。「無いわ」



僕も古い人間に成った時これが飽きる飽きない、とかそういう次元の話ではなくて、一丁前に恋をしていたのだと気が付いた。今度は僕が請う番だった。ゆっくりとナマエから視線を逸らさないで「まだ、飽きていないみたいなんだ」「そう、有難う。嬉しいわ」「うん、それで……これからも一緒に居てほしいな……なんて、都合がいいよね。殺すとか殺さないとか飽きるとか飽きないとか物騒なこと言っていたくせにさ」自分だってナマエの立場ならば都合がいいと嘲って、切り捨てると思う。だけども、ナマエは違った。「そうだね、飽きるまで一緒に居てあげるよ」ああ、それは、怖いな。僕は飽きそうにないのだから。




20140211受取
20140320up


企画参加ありがとうございます!
upが遅くなって申し訳ありませんでした。
私もセカンドステージ・チルドレンの話はやはり暗めが好きですね。
SARUは特にそんな感じがします。と、言いつつたまにギャグや甘い物も書きたくなるのですが…。
企画を通して永樹さんのSARUが読めて私は幸せです…!ありがとうございました!


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