どーもーん。
間延びして呼ぶと、間延びした返事が返ってくる。暑い。雑誌を読んでいる土門の首筋にもうっすらと汗が滲んでいた。エアコンは27度に設定されている。けちなことこの上ない。

「暑いよ。アイス買いに行こ」
「外出んのー…?」
「嫌そうだね」
「嫌だからな」

土門の家はアイスを常備している家ではない。俺の家だって夏しか買わないけど、夏にもアイスを買わない土門一家はどうやって夏を超えるのかと疑問に思う。熱い。

「あっつ」
「言うな、暑い」

犬みたいな吐息まじりの声で言われて、ちょっとむらっときた。飛鳥の首筋には汗が浮かんでいて、そこを舐めたら嫌がるんだろうなと想像する。むらっときた。思えばすごく久しぶりな気もする。

「あすかー」
「言っとくけど絶対やだからな」
「やだやだ、雑誌置いてよ、ね?」
「かわいこぶんな!」

やりとりをしながらも耳をくすぐったり細腰に触れたりしてみるけど、飛鳥の意志はかたいらしくなかなか応えてくれない。そりゃ飛鳥だって素直な方じゃないから最初から頷いてくれることなんてないけど、それでも飛鳥が大事だからいつも飛鳥がうんと言う前に事に及ぶことはなかったし、いつだって飛鳥は最終的に溜め息をついて俺の名前を呼んでくれる。

「もー飛鳥、なに?なんなの?何が駄目なの?」
「やなもんは嫌なの!」
「汗とか気にしないよ?飛鳥の汗の匂いかぎたい」
「黙れ!!」

じゃあなに、と自分でも驚く程の甘い声で囁くと、存外にもそこで飛鳥は堅固だった口を開く。そのゆったりとした一連の動きがなんだかえろくて興奮した、なんてのは絶対に内緒だ。

「……日焼けのあとが」
「うん」
「いや、だから日焼けのあとがあんの」
「…え?」

わかるだろ?と言われてもわかるわけがない。日焼けのあとなんて俺も年中あるし、サッカー少年の勲章だ。
何か問題ある?と聞き返すと、だから言いたくなかったという顔で飛鳥がため息をつく。

「夏は濃いから恥ずかしいの!わかった!?」
「……冬と色違う?」
「ぜんっぜん違うキモイくらい違う!だからやだ!!」

ごめん飛鳥、わかんない。

「ていうかそれじゃ夏の間中お預けじゃん!」
「ざけんな冬までしねーよ!」



110515
半端に終わる
変態のせ




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