佐久間が気持ち悪い話



それは、液晶越しの恋だった。

正確にはそんなようなものだった。友人のひとりが言っていた、触れなくてもセックスできなくても構わないっていう純粋な、だけど禁欲的なんかじゃない恋。そう感じた。

確かに鬼道さんは実在する。不条理なことにこのすばらしくも退屈な世界で、生きている。俺の全てだ。
しかし鬼道さんの全ては俺ではない。もし、仮に、万が一、億が一だとして、鬼道さんが俺を好いていて下さったとしよう。それでも俺は、鬼道さんの全てにはなれない。俺はそういう人間で、鬼道さんもそういう人間だ。

実在するから触れることは出来るだろう。しかし俺は意気地なしなのではっきりとそういう意図を持って触れることはできない。無理だ。もしそうして鬼道さんに嫌われでもしたら間違いなく死んでしまう。比喩ではなく本気だ。だから絶対にできない。

しかしオナニーとなれば話は別だ。誰もいないところでそっと自分を慰めるだけならなんの問題もない。学校祭の時に記念だからと訳のわからないことを言って撮った鬼道さんの写真と、鬼道さんの目の前で落として拾ってもらったハンカチがあれば何度でもいける。

確かに匂いもなければぬくもりもない。しかし、しかしそれは贅沢だ。鬼道さんのぬくもり、とか、匂い、とか、想像しただけでやばい。ほんとにやば、い。汗のにおいでもいい、洗剤の香りとまざって、あ、ああああぁっ鬼道さんっいきますっ鬼道さんっ!


110508
オナニー中でした





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