「え…告白したのか?」

「あ、ぅ…はい。すいません…」


私は次の日の朝、尾浜君が教室に居ないのを確認して久々知君に声を掛けた。尾浜君、鞄は置いてあるからきっと隣のクラスだろうなぁ。こういう時はHRまで戻ってこないから大丈夫。それよりも目の前の久々知君が額に手を当てて深くため息を吐いてしまった…。


「押すなって言ったろ。…それで、どうなった。虫以下になったか?」

「な、なってないよ!たぶん…覚悟してくれるって言ったし…」

「…勘右衛門がそう言ったのか?」

「うん」

「そうか…」


今度は顎に手を当てて考え込んでしまった。しかし久々知君はイケメンだなぁ…。イケメンはポーズがきまるなぁ…。久々知君のファンに嫌われたらどうしようかなぁ…あ、こっち見た。


「勘右衛門がそう言ったんなら、いいか」

「?」

「昼休憩、食べ終わったら多目的室の奥にある旧生徒会室、そこに来い」

「わ、わかった…」

「言っておくが、俺がするのはきっかけ作りだけだからな。覚悟するって言ったんなら、大木から行動したって大丈夫だろう」

「!う、うん…ありがとう久々知君…!」


きっとそこに尾浜君が居るんだ。
よ、よし。久々知君も手伝ってくれるし、私はやるぞぉ!






「は、早すぎたかな…?」


お昼休みに入って、尾浜君が久々知君と教室を出て行ってしまってから気が気じゃなくて…緊張でお腹が空かなくてご飯も食べずにここへ来てしまった。ノックをして、返事がなかったけど一応声を掛けてから開けたんだけど…。
旧生徒会室。って、初めて入ったな…何にも物がないや…。長いソファが二つ。低いテーブルが一つ。窓際に勉強机が何個かある。立ったままなのも何だし、ソファ座ってみようかな…わ、わぁ…すごい座り心地…ここで眠ったらぐっすり眠れそうだなぁ…。体を横にしてみる。うん、やっぱりよく眠れそう…ちょっと目を瞑ってようかな…眠くはないから、目を瞑るだけ………。







「…あっ、う、んんぅ…、ぁ…待って、それは私の………私の卵焼きぃ…」

「ぶっは」

「……ん…?」


誰かの声が聞こえて私はふと目を開いた。あれ?私お弁当食べてて…そしたら尾浜君が私のお弁当の卵焼きを…唯一のおかずを…って夢か。寝ちゃってたんだ…。視線を感じで首を捻ると、向かいのソファで身を乗り出してこっちを見て笑っている尾浜君が居た。

………あっ。


「おはよー大木さん」

「おはよ、おはまくん…」

「えっちい夢見てるのかと思ったら卵焼きだもんなー。おっかし」


あ。今日もちゃんと笑ってる…。肩を震わせて笑う尾浜君はかっこいいなぁ。笑わせられる夢見てよかった…。寝転んだままぽーっと尾浜君を見ていたら、尾浜君はにやりと意地悪く笑った。


「やらしー格好してえっちい夢見てるんだったら、襲っちゃおうかと思ったのになぁ」

「え…?……!!!」


指を指しながらそう言うから、自分を見てみたら…膝を立てて寝てたみたいでスカートが捲り上がっていた。慌てて起き上がりスカートを直すと、尾浜君はざーんねん、と笑ってソファにごろんと寝転んだ。


「大木さんここで何してたの?」

「あ、その、何も…」

「俺を待ってた?」

「!そ、そう、です…。久々知君に、教えてもらったの。勝手にごめんね…」

「んーん。別に俺の部屋じゃないし」


携帯をいじりながら会話をする尾浜君は、機嫌は悪くなさそうだ。よかった、ウザいと思われなくて…。


「大木さん、兵助と仲良いね」

「そう…かな?久々知君は尾浜君の事教えてくれるだけだよ」

「それが普通じゃないんだけど…まぁいいや」


むくりと起き上がった尾浜君はこっちを向いて、人差し指をぴっと立てた。


「いいの?」

「…?」


よくわからなくて指の先を辿ると、壁掛け時計があった。時計が指してるのは授業開始いっ…ぷんまえ…。


「よくない…!!」

「走れば間に合うよ。がんば!」

「う、うん…!あ、尾浜君!」

「ん?」


慌てて飛び出そうとして顔だけ戻す。


「あの、またここに来てもいい?」

「…いいよ。俺は昼休憩はここいるから」

「ありがとう…!じゃあ!」


尾浜君は困ったように笑って、その顔も初めて見る顔できっと素だと思うんだけど…それどころじゃな、い!今はとにかく教室まで走って、着いたら考えよう。50m11秒の私はひいひい言いながら走った。




「はあ、はあ、はあ…、はぁ、はあ……あれ?」


教室に着くとわいわいがやがやで…あれ?
壁の時計を見ると昼休憩はまだ10分くらいあって……あれぇ…?
入り口で止まっている私の肩を、ぽんっと叩いて誰かが教室に入る。あ、尾浜君…。


「あそこの時計、電池止まってるよ」


…や、られた…。




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