「あ、尾浜く…ん……」


カラカラと扉を開けるとソファに横になった尾浜君の後ろ頭が見えた。声を掛けようとして、不自然に動かない事に気付く。音を立てないように回り込むと尾浜君は眠っていた。
尾浜君の寝顔…初めて見た。可愛いなぁ…。


「………」


尾浜君の顔のすぐ横にしゃがみこんで、思わず回りを見回す。当たり前だけど他には誰も居ない。顔の前で手をひらひらと振ってみる。反応なし。


「おはまくーん…おーい…」


小声で声を掛けてみる。反応なし。また手をひらひらと振って……よし、ぐっすりおやすみの様だ。


「寝てる…のが、悪いんだもん……」


自分に言い訳をしながら尾浜君の顔に自分の顔を近付けた。…こうまじまじと見てみると、尾浜君も意外とまつげが多いんだなぁ…。眉毛が下がっててかわいい。口は半開きで……この口と、私は…ちょっとこの前の出来事が甦って顔がボッと熱くなった。一度顔を離してふるふると頭を振る。そうしてもう一度顔を近付けた。よ、よぉし、あき、尾浜君から奪います!


…ちゅ


一瞬だけ触れ合った唇に更に頭が熱くなる。し、しちゃった…しかも無抵抗の人間に…少しの罪悪感とたくさんの幸せな気持ちがドドドと押し寄せてきて顔を手で覆った。お、尾浜君が起きたら顔ちゃんと見れるかな…まともに見られなくて怪しまれそう。起きてる時にすればよかった……いや無理だ。


「起きてる時にしたらお礼に何されるかわかんない…」

「そうだねー。あきちゃん俺の事よくわかってるうー」


「………え」


ぽんって。
頭に乗せられた手が移動して顔を覆う手を優しく開かれた。寝ていた体勢からいつの間に変わったのか、尾浜君は腕を立てて頭を乗せてこっちを見ていた。い、いつから起きて……!!


「俺だって寝てる時は手出してないのになぁ。あきのすけべー」

「あ、う…返す言葉もございません…」


顔が熱い。恥ずかしい。私のすけべ…!恥ずかしすぎて暴れだしたくなっていると、尾浜君の顔が近付いてきて私の肩に顎を乗せた。


「まぁ、すけべなのは大変よろしいです」

「は、はい…?」

「学校で止まんなくなっちゃったら困るから…お礼は後でね」

「…っ…!!!」


最後は耳元で囁かれて、ちゅ、と耳にキスして離れていった。音が…音がすごい…!耳に残るキスの音にこれ以上無いと思った顔がまだ赤くなる。尾浜君は私を見てへらりと笑った。


「け、血管破裂で死んじゃう…!」

「大丈夫大丈夫。こないだあーんなチューしても死ななかったんもご」

「言わないで!!」


真っ赤になった手で尾浜君の口を押さえる。手まで熱くて赤くなってる。嘘でしょ知らなかった…。尾浜君はきょとんと目をパチパチさせて、ニィ、と笑った。口は見えないんだけど、目だけでわかる…。







くるくるり







「っひあっ!!ま、また舐めた…!」

「こないだはあきがしたもん。やられたらやり返さないと気が済まないんでーす」

「う、う…」

「と言うわけで、帰り俺んち来る?」

「!!………い、く…」

「…あは、いい子」



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