何となく、久々知君から目を逸らす日々が続く。だってやっぱり気まずいし…久々知君はケロリとしていて全く動揺が見えない。だけどやっぱり私には…無かった事になんて出来なくて…。ぱちり、と久々知君と目が合う。すぐに逸らした。
…最近、よく目が合う気がするなぁ…。意識して見すぎてるのかな…。









「あき、今日またあのカフェ行くんだけどさ、一緒に来る?」

「え…行ってもいいの?」


放課後に玄関を出た所で尾浜君と会い、私は目を丸くした。しかしまた不破君見に行くのかな…?仲が良い…のか野次馬なのか分からないけど、何かいいなぁ。


「勘右衛門、おまたせ」

「ああ、兵助あきも行くって」

「久々知君…」


鞄を持って現れた久々知君と目が合い、うつむいた。久々知君も行くのかぁ、そっかあ……。


「あ、私…邪魔になったら悪いし、二人で行ってください」

「え?邪魔になんてなんないよー。ねぇ?」

「大木」


尾浜君がこてんと首を傾げて久々知君を見る。久々知君に呼ばれて見れば、いつもの無表情で真っ直ぐに私を見ていて…久々知君はやっぱり、何考えてるかわからないし怖いなあ…。


「来るだろ?」

「…は、はい…じゃあ…」


何となく、逆らえない…。尾浜君は私達のやり取りに不思議そうにしていた。







前に座った席が空いていて、同じ所へ腰かける。相変わらず三人でお店を背中に座っていて…どうして私が真ん中なんだろ…。


「あ、ごめん電話だ。あきあの子が出てきたら兵助に教えてあげて」

「う、うん…」


尾浜君が立ち上がって携帯を操作しながらどこかに行ってしまう。目で追っていると視線を感じて久々知君を見れば、じっとこっちを見ていた。き、気まずいなぁ…。ぱっと注文した抹茶ラテを覗き込む。熱いだろうなぁ、まだ飲めない…何すればいいだろう…あ、尾浜君にお願いされたんだから本屋さん見てなきゃあ…。顔を上げると久々知君がため息を吐いた。


「大木お前な、もっと自然にしろ。俺への態度が明らかにおかしいぞ」

「ご、ごめん…でも…」

「勘右衛門が怪しんでるぞ。変な誤解を与えてもいいのか」


その言葉に勢い良く久々知君を見た。


「よ、よくないよ!」

「なら、普通にしろ。たかがキスくらいでそんなに動揺するな」

「た、かが…」


久々知君にとってはたかがキス、なんだ…。やっぱりああいう事に慣れているのかな。無かった事になってるんだろうな。私とは違うのかも知れない。けど…。


「わたし、は…」

「?…なんだ」

「私にとっては、そんな簡単な事じゃないよ…久々知君はさ、慣れてるのかもしれないけど、私は…」

「…いや、待て。俺はただ大木は勘右衛門の事が好きだから気にしないようにと思ってだな…」

「わ、私だってそう思ったもん…!私の好きな人は尾浜君で…だから、無かったことに、って…だけど…だけど……」

「……あ、待て」

「だけど…キスなんて慣れてないんだから顔見たら思い出しちゃうのはしょうがないでしょもう…!怒んないでよ!!」



「…キスしたの?兵助と?」



背筋も凍りそうな声が後ろから聞こえて、思わず久々知君を見た。久々知君は「だから待てって言ったろ…」と顔を手で覆った。そ、そう言われましても…。
恐る恐る振り返るとにこにこ笑顔の尾浜君。だけど、何でかな…全然笑ってないってわかるのは……。私もつられて引きつる顔で何とか笑うと、隣の久々知君が立ち上がった。


「俺は帰る」

「えっ…」

「あーうん」


どうして…!!!久々知君が一番問いただされるべきなのに…!尾浜君も怒んないしどういう事だ…。驚いて見開いた目で久々知君を見ていると、尾浜君と話していた目線を私に向ける。暫く無言で見つめられて、肩をぐいっと引っ張られて耳元で囁かれた。


「俺はあれが初めてだった」

「……!!!!」


す、すいませんでした…。




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