「ハチ、聞きたい事があるんだが」
「ん?何だよー」
放課後、久々に何もない日にのんびりとしていると兵助がきょろきょろと回りを見回しながら近寄ってきた。まぁ座れ、と腰掛けていた縁側の隣を叩けば兵助は重々しく座る。
「ハチはセナが好きか?」
「何だよ急に」
「いや…ハチはセナにいつも詰め寄られても、同様したりしないからどう思ってるのか気になって…」
「詰め寄るって…セナはすぐ突進してきて距離感ないからな!いつもの事だろ」
「何とも思ってないのか?」
「?」
「竹谷ー!遊ぼうよー…あっ!」
また向こうからやって来たセナはにこにこと笑顔で駆け寄ってきたが、その隣に座る人物が兵助だと気付いてピタリと足を止めた。
「よぉ!今日は暇なんだー。セナ何して遊ぶ?」
「えっ、あ、あの…私今日ユキちゃんと約束あるんだった!!ごめん、竹谷またね!!く、久々知も!」
「?おー、またな…」
「あ、ああ…」
おかしい。どう考えてもおかしい。
今まで八左ヱ門と兵助が一緒に居て、兵助に食って掛からないセナを見たことがなかった。あいつは自分の用事よりも俺を優先する。八左ヱ門は断言出来る。それに兵助もだ。どうして頬を染めてセナの後ろ姿を見つめているのだろうか。さっきの質問だって違和感がある。
「…ハチ」
「な、何だ?」
兵助が遠くを見つめたままぽつりと溢す。
「ハチが何とも思ってないなら…いや、思ってても、俺はセナを狙うぞ」
「えっ」
「可能性はありそうだからな」
そう言ってセナの消えた方向へ走って行く兵助を八左ヱ門はポカンと見送ったが、気を取り戻し慌てて追いかけた。
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