「たーけや!何してるの?」

「よぉ。餌探してるんだ」

「何の餌?」

「鷹の餌」


今日も決まり事の様に八左ヱ門を訪ねたセナは、しゃがみこむ八左ヱ門の後ろからぬっと顔を出した。さっきから石をひっくり返しては土を掘り起こしている。


「私も手伝う!」

「本当か!みみずなんだけど」

「みみずくらい全然大丈夫だからねあの切っても死なない生き物で顔がどっちかよくわかんなくてたまに物凄い暴れるみみずなんて」

「わかったよ…無理すんなよ…」


セナはおおよそ女の子が嫌いな虫も平気だがみみずだけはダメだった。ガクリと肩を落として八左ヱ門の隣に座り込む。


「ごめんね、手伝えなくて…みみず、みみずだけは…」

「いいって、気にすんな。気持ちだけで嬉しいからさ。な?」

「…えへ。竹谷好きー!」

「おう、ありがとー!」


そう言ってセナの頭をポンと叩く。セナは俯かせた顔を上げてにへらっと笑った。八左ヱ門の、こういう素直に感謝を人に伝える所が好きだ。だけどその手がみみずを掴んだ手だと気付いて少し固まった。

一時の幸せはすぐに終わった。兵助がセナとは反対の八左ヱ門の隣に身を屈めたから。


「八左ヱ門、餌探しか?手伝おう」

「おー兵助、助かるよ!」

「チッ、また来た…」

「ん?何だ、お前も手伝ってるのか?ああ、もしかして虫が苦手で触れなくて見てるだけか?全くこれだから女は…」

「くーくーちー…!」


セナは逆上し易く、乗せられやすい性格をしていた。その点だけ言えば兵助はセナの扱いを心得ている。


「触れるわ阿呆ぉ!!怖くなんてねーわ!みみずは私の友達だわ!」

「その友達は鷹に喰われるぞ。いいのか」

「キーッ!!ああ言えばこう言う奴!!頭きた!久々知勝負よ!より多くみみずを取った方が竹谷に褒めてもらえるのよ!!!」

「いいだろう」


心頭滅却すれば火もまた涼し。竹谷の事を思えばみみずも友達…セナは自分に暗示を掛けるように念じた。


「今から日暮れまで!」

「よし」

「久々知にだけは負けない!!竹谷待っててねーーー!」





結局、セナは蠢くみみずの山に正気に戻り気絶した。八左ヱ門が保健室に背負って行った。

戻ると掘り返したままの穴ぼこだらけになった地面につまずいて、虎若が毒虫をひっくり返した後だった。兵助はみみずをぎゅうぎゅうに虫かごに詰めて自分の委員会に行ってしまった後だった。八左ヱ門が回収した。




「お前ら、有難迷惑って知ってるか?」




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