「な、中在家課長…」

「何だ」

「一体何時から始まったんですか…?」

「…会議が終わったのは5時半だった」


じゃあ、正味30分ですよね…? 30分…そんな短時間で…。


「おーい長次こっちだー!あっ、お姉さん二人追加ね!生2つ持ってきてー!」



「俺はレモンサワー…」

「ハッ、男がサワーなんて飲んでんじゃねぇよ。万年焼酎お湯割りみたいな顔して」

「あぁ!?お前こそカクテルがぶ飲みしそうな顔しやがって!」

「何だコラ、やんのか?」

「おーやってやる。日本酒一升瓶でくれ!」

「二本な!!」



「ふむ。では伊作、受付の佐下はどうだ?」

「あー、あの子?お金目当てって丸見えだよ〜僕はあんまり好きじゃないなぁ。僕は留三郎の所の眼鏡っ子がいい」

「年下ロリ好きか…」

「そういう仙蔵はきつめ美人のドMが好きなくせに…」

「…飲むか?」

「あは、いーよぉ?」


30分で何で皆出来上がってるんだよぉ…!怖い!!こんな飲み会参加したくない!!!
何とか中在家課長に言い訳して店を出ようとすると、ぬっと私の前にそびえ立つ壁…な、七松課長…。


「どうした?早く座れ」

「はいぃ!」


七松課長は、何か野生の勘で感じ取ったのかもしれない…目が笑ってなかったし…。怖くて素早く何度も頷いた。
私が頷くとパッと笑顔になり、こっち来い!と腕を掴まれて座らされた。あー!!何で中在家課長離れちゃうんですか!私の唯一の逃げ場が…。しかも七松課長と私の向かい、立花部長と善法寺課長だし!まだ食満課長と潮江部長のがよかったわ!!
思わず見ていると、立花部長とバチッと目が合った。


「小平太が部下を連れて来ると言うから滝夜叉丸かと思ったら、女だったのか」

「珍しいね、女の子連れてくるなんて」


じっ…と見つめられて怖いです…。何かとても傷付く事言いそうこの二人…。思わず七松課長の影に隠れるように身を寄せると七松課長に頭を撫でられた。七松課長がこんなにまともに見れたのは久しぶりだ!!


「な、七松課長ぉ…!」

「何だー?皆いい奴だから大丈夫!」

「い、いえ、それはそうだと思うんですけど私場違いじゃないですかね!?」


半泣きで七松課長の袖を握り締めれば、課長はニコニコと笑った。


「これはなー、礼だ!」

「えっ」

「いつも弁当、作ってくれてる礼!あと弁当代払うの忘れててごめんな!毎回は面倒だから月末にまとめて請求してくれ!」

「な、七松課長…!」


お、お弁当代思い出してくれたんですね…!?

じゃなくて、

吊り橋効果!こんな恐怖でしかない飲み会で唯一まとも+ずっと思い悩んできた目の上のたんこぶ解消+きらっきら笑顔で吊り橋効果発揮して惚れてしまうヤバイ直視してたらダメだ!!!!


「ん?どうした?」

「あ、いえ…あの、今ちょっとこっち見ないで下さい…」

「何だよー」


いつもなら、わかった!とか言ってさっさと飲むことに専念しそうなのに、酔っているのかやめてと言っても更に覗き込んで来る。あの…本当に、惚れるから…そういうのも既に可愛いとか思っちゃってますからやめて…。


「…純粋っ子ぽいなぁ。眼鏡があれば…、」

「…仕上げれば従順なMになりそうだな…」


そしてそこ、向かいで自分の好みに私を近付けようとしないで下さい!!
私は色々なものから逃げるため、目の前のジョッキを握り締めた。





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