七松課長に弁当を貢ぐ日々が続いた。

おい、課長の弁当代って請求していいの…?人の目を気にして自分の晩飯より豪華なのは相変わらずだ。あ、だけど良いこともある。私のお弁当も豪華になったから…ってバーカーもーん!その食材費の出所が問題なんだよ!!弁当代今までの三倍ってどういう事?一人分増えて三倍って何なの?米買う回数が今までよりめっちゃ増えたんですけどどういう事??ねぇ課長私…お金がないんだよぉ…!!!!


「…課長」

「ん?おー、ありがとなー!」


という気持ちを込めて目で訴えてみたけどやはり伝わらなかった…。今日は何かなー、なんて楽しそうに弁当を開く姿は正直嬉しいけど…。お金…お金があればこんな悩みは…。

課のメンツから憐れみの視線が寄せられる。彼等には、誤解があると怖いので最初に強く主張しておいた。お弁当は!貢ぎ物で!!何も!!!!何も!!!!!!!!ないと。強く主張しすぎて同期の次屋にはドン引きされた。


「おい、小平太。お前宛の請求書だ」

「ん?私に?」

「そうだよ!お前が破壊した非常階段のドアノブ、あれは会社持ちにはなんねぇからな!」

「えー、わかった」


席に着いてお弁当を食べ初めてすぐ、総務課の食満課長がお怒りでやって来た。まーた壊したのか…昼飯前で何故か興奮状態の七松課長はよく会社を壊す。比喩じゃなく。


「…おい、大木」

「何?」

「いや…」


ご飯を食べていると、向かいに座る次屋から声を掛けて来たくせに言葉を濁す。何だ?お弁当に向けていた視線を上げると、次屋は何も言わなかったけど、顎で私の後ろを示した。何なんだよ…。

振り返ったら食満課長がじっと見ていて椅子からずり落ちるかと思った。


「け、食満課長…お疲れ様です」

「ん?おお、お疲れ」

「私に何かご用ですか…?」


何をそんなにじっと見つめているんだと食満課長の視線を辿れば私の弁当がある。あれ既視感。


「あの…?」

「その弁当、お前が作ってるのか?」

「は、はい…」


そう言うと食満課長の視線は七松課長を向く。そしてもう一度私に戻ってきた。


「二人って、そういう関係?」


今日のお弁当は、三色丼だった。七松課長は肉多め希望なので全体に肉を敷き、卵をドットの様に配置して絹さやはご飯を二段にして真ん中に入れておいた。私のは普通の三色丼だから、それだけなら何とか被ったってだけでばれなかったろう。だけど、何か早起きしてしまって…時間の余った私はゆで卵をニコちゃんマークにデコって入れたのだ…自分のにも…


「い、いえ!これは…」

「おい大木!ごちそうさま!あのゆで卵凄いな〜自分で作ったのか?」

「あ、ええ…」

「やっぱり大木はいい嫁になるよ!私の所に来い来い!」


わはは、と笑い食後の運動にさっさと消えた七松課長を唖然と見送ってしまった。「おい、いいのか…」と次屋の声でハッとして振り返ったら食満課長の姿はもうなかった。


「食満課長…は…?」

「一人で納得して行っちまったけど」

「お…、おいいいいぃぃぃぃ!」





back
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -