「た、滝先輩、あの…」

「大木、どうしたんだ?」

「いや、あの…驚かないで聞いてください。いや、絶対に驚くと思うんですけど…」

「?何なんだ」


いつもより少し早く会社に着くように家を出た。滝先輩と話をするためだけど…。ちらりと正面に立つ滝先輩を見上げる。不思議そうに腕を組む彼はこれから私が言おうとしている事をミジンコ程も予想していないだろう。…やっぱり言えない、言えないよぉ…!!


「本当に、事実を伝えるだけですからね!」

「はあ?何を言っているのかわからん。大木、早く言え」

「はよーっス。どしたんすか」

「三之助。お前の同期、支離滅裂だ」

「はあ、何なの?」

「いや次屋お前はあっち行ってろ…ややこしくなるから」

「なんだよー」


のそのそやって来た次屋も集まって輪が出来る。そうなると何を集まっているんだと時友君と皆本も寄って来た。これならさっさと言っちゃえばよかった…!


「で、でもダメだやっぱり私には言えないいぃ!!!」

「何なんだ…」



「あ、滝夜叉丸!お前らも集まってちょうどいい」

「七松課長、おはようございます」


顔を覆って叫びしゃがみこんだ時、タイミング良く七松課長がやって来たようだ。いや、タイミング良いのか?最悪なんじゃない?


「滝夜叉丸、今週の休み引っ越しを手伝ってくれ!お前らもな!」

「いいですが、七松課長、引っ越されるんですか?」

「いや、私じゃない」

「?では一体誰の…」

「大木のだ。私の家に住むことになった!」

「え」


タラリと冷や汗が流れる。それを言うために私は先に会社へ来たのだ。滝先輩に事の経緯を説明して、私も理解できてないんですけどね〜いや七松課長の言う事だからな苦労するな大木!あははは。位の会話をしておくつもりだったのだ。だけど私が口を挟む隙は無かった。
今、顔を上げたくない…。わかるよ、皆が今私の事見てるんでしょう。視線が刺さるってこういう事だったのか私比喩だと思ってたよ凄く痛いよ…。沈黙に耐えられず静かに立ち上がった。


「大木…」

「いや、あの滝先輩、これは私もよくわかってな」

「あ、大木居たのか。置いてくなよー!朝起こしてくれって言ったろ」

「ま、まさかもう一緒に住んでいるんですか…!?」

「そうだな、土曜からか?」

「ぶ、ぶっ飛びー…」


滝先輩の声が驚きで震えている。時友君、それは私も同意見だよ…。


「とにかく、頼むぞ!車借りてくるから土曜8時に駅前集合!わかったら仕事しろー」

「しかも早ェ…」


次屋が何か言いたそうな目でこっちを見てきたけど、サッと逸らした。私が、そんな事口出し出来るわけないでしょ…!


「この週末に一体何があったんですかね…」

「大人の恋って、燃え上がると一瞬だからね」

「やめて時友君からそんな言葉聞きたくない」


横の席での会話に思わず耳を塞ぐ。お前のボキャブラリーはどこで養ってるんだ…。ふと次屋と目が合って奴は大げさに頭を押さえた。


「はぁ、マジかよ…ついに同期が上司とデキちまったとか…大木センパイ…」

「………」

「……え、否定しないって事はマジで?」

「お前は黙って仕事しろ…」

「マジかよ…うげぇ、想像しちまったじゃん…」

「あ、あんたが言ってきたくせに!!」


「三之助、大木、お前らうるさい」

「「すいませんでした」」


肩を落とす次屋に思わず言い返したら私まで怒られた。二人で立ち上がって頭を下げた。







「なぁ大木ー」

「はい?」

「やっぱり二人で寝るのは狭いから大きい布団買うぞ!」

「か、課長今仕事中ですから。他の課の人がこっち見てますのでそういうのは家で大木と二人でしてください」

「うーん、風呂も狭いかなぁ。いっそ引っ越すか?」

「だ、だからそういうの今言わないで下さいませんか!?」

「うげぇ…また想像しちまった…」


「なっ…








七松課長!











やめてくださいお風呂まだ一緒に入ってないですから!!!」

「大木!!!お前も大声で何て事言う!!!!」


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