「…大木、ねるぞ」


立花部長達は始発が始まる時間に合わせて素早い身仕度を見せ、素早く帰っていった。
私はどうすればいいのだろうかと悩みながら、でも片付けてから帰りたいし…と心の中で一人言い訳をしながら見送った。正直一緒に出ても恐いというのもある。


「………はい」


七松課長も多分、眠さの限界だった。静まり返った部屋で再び襲ってきた睡魔は私もそうで、二人倒れるように眠った。








「…ん、」


今、何時だろ…。携帯、携帯は……。

瞼が重くて上がらない。手探りで携帯を探していると無機物とは正反対のものに触れた。そう言えば、私七松課長の家に………。


「んー」

「っ!!!」


触れていたのは七松課長の手だったらしく、一回り大きなそれにすっぽりと包まれた。ビクリと過剰に反応して上体を起こすと隣を見る。課長はまだ眠っていた。それにほっとして携帯で時間を確認すれば朝の7時。まだ三時間位しか経ってないのか。


「…七松課長、寝顔可愛い…」


普段の行動も可愛いと思うことが増えたけど、寝顔は恋愛感情なくても可愛いと思ったんじゃないかな。無防備って、こんな感じ?
音を立てないように静かに顔を近付ける。七松課長に私の影が差した。七松課長からは、何度もキスされた。私からしたって、…いいよね。今、寝てるし…。
自分に言い訳をしながら掴まれていない方の手を課長の頭の脇にそっとついた。鼻が触れそうなほど近距離になると、バクバクとうるさい心臓に目をぎゅっと瞑った。


「…遅いなぁー」

「えっ!?わああぁっ!!!」


目を開けると近距離でパッチリ開いた課長の目が合う。驚き飛び退くと課長は「あれー、やめちゃうのか?」と口を尖らせた。


「か、課長、いつから起きて…」

「んー、寝顔可愛いって」

「わああああ…!!!」


赤くなる顔をパッと押さえた。き、聞かれてたぁ…!!!七松課長は、寝転がったまま腕を頭の後ろで組んでじっとこっちを見た。


「お前、男が可愛いなんて変わった奴だなー」

「い、いやっ!別に全部が全部男の人可愛いと思ってませんから!七松課長だからです!」

「何で私?」

「そ、それはその!好…きだから、です…」


勢いのまま喋っていたけど、途中で言っている事が恥ずかしい事だと気付いてどんどん声は萎んでいった。ていうか私、七松課長に好きって言ったこと無いし。初めての告白がこんな勢いのでいいの…。
七松課長を見ると、目をぱちぱちさせて私を見たあと、天井を見上げて、それからニッと笑った。



「そうか。私も、大木が好きだ」



そ、そう言えば七松課長からも言われてなかった…。顔が喜びでにやけてしまったから、七松課長に見られる前に両手で覆った。





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