七松課長が受付の制服を借りてきてくれた。んだけど…。


「あの…これしかなかったですか?」

「ん?いや、あったけど。でも女って、Sサイズだろ?」


そ、それは七松課長が大きいから皆小さく見えるだけなのでは…。

七松課長が人事部から借りてきた制服はSサイズの制服だった。入らなくは、ない…と思うけど…。


「とにかく着替えろ。もう始まるぞ」

「は、はい…」


時計を見て、あと五分。私は更衣室に走った。





オフィスを早歩きで進む。何か皆私を見てる気がする。いや、これは自意識過剰だ恥ずいから。


「あ、大木お前に…」


戻って来た私に次屋が言葉を無くした。違和感を感じた滝先輩が不思議そうに顔を上げて「なっ、!!!」顔を赤くして声を上げた。


「な、何も言わないで見ないで…!」


すちゃっと机に座ると背中を丸めた。私は、女子の中では身長が高い方だ。モデルみたいに高いかと言われるとそう言う訳では無いけど。
その私がSサイズの制服を着てみろ。スカートは膝丈の筈なのにミニスカートだし、後ろなんてスリット入ってるから物でも拾おうものならパンツ見えそう。シャツもベストもピチピチで体のラインめっちゃ出てるし。次屋がボソッと「エッロ…」と言ったのが聴こえたのでシャーペンを投げた。とがってる方。


「あっ…あっぶねぇ…!!」

「今日は私…昼の買い出ししません……」

「あ、あぁ…」

「お、俺行きます」

「ありがとう皆本…」


スーツの替え、この間実家に置いてきちゃったんだよなぁ…。買いに行くのも、七松課長の服で行く勇気はない…だから三日後まで制服借りていたい。
極力立たずに終業まで乗りきろう。終わったら制服のサイズを変えてもらうんだ…。出来れば七松課長の前に立ちたくない。無理だろうけど。


「おーい、キャンペーンのプレゼンまとめた奴ちょっと来てくれ」

「…はい」


即行無理だったわ…。仕方なく七松課長のデスクまで行くとプリントを手渡された。


「これでいいぞ!プレゼン用に25部刷ってくれ」

「わかりました」

「すまんなー、コピー機の調子が悪いから今日修理来るんだ。他所の借りるか、資料室行ってくれるか」

「はい」


意外と業務の内容だけだったのでほっとした。資料室のコピー機は、階が違うから面倒であんまり使われない。人が滅多に来るような場所じゃないし今日の私にはそっちの方がいい。
二つ上の階だからエレベーターで行こう、と背を向けると、七松課長に名前を呼ばれた。


「はい?」

「…今日、エレベーターは使うな!」

「えっ!?な、何でです…」

「何でもだ。たまには運動しろ!」


そ、それって…この制服がピッチピチすぎて贅肉ヤバイよ。って事…?ショックで小さな声で了解を告げた。





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