「もう大丈夫かー?」
「は、はい…大ッッッ変失礼しました」
泣き終わった後の、こっ恥ずかしい事よ…!
分かってる。七松課長が、全然気にしてないって。誰かに言いふらしたりするような人じゃないって分かってるよ。だーけーどーこーれーは!!!そう言う問題じゃないあああああマジ泣き方が子供だった恥ずかしいいいいいいぃぃぃぃ!!!
七松課長は私の背にあったボタンに手を伸ばした。あ、そう言えば何も思わなかったけど、階押してなかったのか…。近くなった七松課長を見上げると私の視線に気付いた課長はニッと笑った。
「上だと、皆に聴こえたら嫌だろう?」
「あ…」
もしかして、私を泣かせるためにわざと押してなかったの?
七松課長。いつも皆を振り回して、自分の思うままに行動するような人だけど、実は人の事よく見てたりするんだよなぁ。私はやっぱり、そんな七松課長が好きだなぁ。
「…ありがとうございます」
好き。愛しい。そんな感情が湧いてきて、自然と顔が綻ぶ。七松課長はぱちぱちと目を瞬かせ、私の顔をじーっと見ると、距離を縮めて来た。
「………」
「か、課長…?」
逆行で顔がよく見えない。なんて考えていると、七松課長はそのまま首を下げて私の唇にちゅう、と吸い付いた。
………え?
チーン
「あっ小平太!何してたんだ、よ…」
驚いて目だけを動かして扉の方を見たら、エレベーター前で片手を挙げたまま固まった食満課長が視界に入った。
扉が閉まる。
「……あ、な、なまつかちょ、ど、どうして…」
「…ん」
ゆっくりと離れた唇を思わず目で追う。
七松課長は私の唇を親指でなぞって、手を離した。そしていつもみたいな笑顔に戻る。
「好き合っていると、感じたからだ!!」
「…なーんだ。やっぱり良い仲なんじゃん。さっ、留三郎、野暮だよ野暮。もどろー」
「あっ、酒買ってきたぞー!待てよー」
後ろでもう一度扉が開いて、善法寺課長がぼやいて戻った後を七松課長は追って行った。残された私の後ろでもう一度扉が閉まった。
「かかか課長ぉーーーー!!!」
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