休憩にジュースを買いにエレベータホールへ行くと、後ろから声を掛けられた。
「あっ、小平太の彼女ちゃん」
「…違います。お疲れ様です、善法寺課長…」
否定するのも面倒になって来た今日この頃です。
課長達は、からかい半分で言ってくるのも理解した。善法寺課長と、立花部長だけだけど。
「僕は小平太と君は良い仲なんだと思ったんだけどなぁ。否定するって事は違うの?」
「いや…。課長、彼女居るじゃないですか」
「えっ!いつの間に!?」
善法寺課長、凄い驚いてる。そう言えば彼等に七松課長の恋人の事を一度も聞いてなかった。だけどこの様子だと知らないみたいだなぁ。
「どんな子?」
「え?料理出来そうな人…ですかね?私は見てないんですけど」
「見てないの?」
「は、はい…家に送らせて頂いた時に、料理グッズが揃ってましたよ」
先週の事を嫌味を込めて告げる。そう、お前のせいだ…善法寺課長が押し付けて来なければ七松課長の事を好きになる事も失恋する事もなかったのに…!
だけど善法寺課長は嫌味を気にする風でもなく笑っていた。
「…あー、そういう事かぁ」
「…?どういう」
「小平太のイイ人、教えてあげようか?」
「!」
どうやら思い当たる人が居たようだ。き、気になる…だけど教えてくれるって事はもしかして社内とか?!
「この会社の人ですか?」
「そうだね」
「!そ、そうなんですか…」
っていう事は、七松課長と私の噂をその人も耳に入れてるのでは…?絶対良い気はしないじゃん…!!私だったら絶対嫌だ!謝らなければ!!て言うか七松課長彼女が社内に居るなら噂否定しろよ…!!
「おっ、教えて下さい!!知り合いなら、紹介してください!!」
「どうして?」
「だって、変な噂立ってるし、誤解を解いておかないと…」
「そっか。君は良い子だね」
善法寺課長は子供に話し掛けるように優しい声だった。無意識に俯いていた顔を上げると善法寺課長の…何か腹に持ってそうな笑顔…。あー…何でだろう、解っちゃった…純粋っ子好きな善法寺課長がどうやってオトしてるか…。
「会わせてあげるから、今日仕事終わったら空けといてね」
善法寺課長、楽しそうですね…?
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