私と七松課長が付き合っているという噂が瞬く間に広がった。それと言うのも、


「す、すいません…七松課長はいらっしゃいますか?」

「あ、平太。七松課長は今外だよ」

「そう…じゃあこれ、お願いします…」


「……え?わた、し?」

「何で大木先輩?滝夜叉丸先輩じゃなくて?」

「うん…。食満課長が、七松課長が居なかったら彼女に渡して来いって…」

「け、食満課長おおおぉぉぉぉお!!!」


前回の飲み会に居た七松課長の同期の皆さんが、そういう風に言っているらしい。昨日は潮江部長の所の田村さんが来た。


「下坂部君…食満課長に、ち が うって伝えてくれる?」

「え…?」

「言 え る よ ね ?」

「ひっ、ひゃあい…!」


課長、部長に加え同期の友人である彼等の言葉を皆信じている。私は一つ一つそれを訂正しているのだが…。
わ、私だってねぇ、そんな噂立てられて浮かれたいわ!!でも本当の所がハッキリしてないから呑気に喜んでらんないんだよ!もし浮かれて彼女が居てみろ、馬鹿な女だろうが…!

大体七松課長の耳にも噂は入ってるはずなのに、否定もしないし…。自分から振るのも何か嫌でこの話は課長とは一切していない。


「さー飯だ!大木、ご飯!」

「あ、お疲れ様です」


外から帰ってきた七松課長は、暑かったようで上着を肩から下げていた。すっと差し出されたので自然と受け取る。こ、こう言う所だけ見れば奥さんみたいだなぁと喜んでしまうのは仕方ない…。
七松課長は上着を受け取った私をキョトンと見つめてからニカッと笑った。


「なーんか、お前奥さんみたいだな」


考えていた事を言われて思わず嬉しくなる。
課長、噂の事どう思ってるんですか。課長が否定しないから、喜んじゃうじゃないですか。課長が否定しないなら…呑気に喜んでてもいいのかな、



「いや、母ちゃんみたいかな?」



いや、やっぱり気を引き締めて行こう…!





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