「なぁ、あき知ってるか?天女様が降りてきたんだって」
「え?痛っ」
「あ、ごめん」
髪に葉っぱが絡まってる。と中々無理やり髪から取ってくれた。悪気がないのはわかっているから、何も言わないけど。
「何が降りてきた?」
「天女様。裏山ランニング中に空から人が降ってきたって金吾が言ってた。変な格好で綺麗な女の人だって」
「へぇ…」
「だから、ちょっと見てこようと思って!今言ってて思い出した」
七松君は立ち上がると、じゃあな!とどこかへ走り去ってしまった。あーあ。今日、ちょっとしか話せなかった。天女様とやらめ。
得たいの知れないものに嫉妬してしまう位、七松君が好き。彼も、もう少しそういう乙女心がわかってくれればなぁ。
「おーいあき!」
「あれ?」
「今日あんまり、話せなかったから、夜話そうな!」
どこからか戻って来て再び走って行く後ろ姿を見送る私の心は、一度目よりもずっと温かい。
「あー!負けた…」
惚れたら負けって、よく言ったものだ。勝てる気がしない。
緊張。だけど傍にいる。