私?私は天女様。
天上の国からやって来た天女様よ。

あら、間違っていないでしょう?漫画なんて見下ろして読むものなんだから。


私はいつも思っていた。
夢小説の天女様って、どうしてすぐ嫌われたり殺されたりしちゃうの?男好きで嫌な性格の奴ばかり。
その点では私は生徒たちを分け隔てなく可愛がったし、与えられた仕事はこなした。見かければ他の仕事も手伝ったりもしていたから気に入られていたでしょう。

それに逆ハーなんて私は求めていなかった。私が狙うは大好きな暴君七松小平太のみ!回りの皆も私が小平太を好きだって分かっていたでしょう。彼だけに特別優しくしたり贈り物をしたりしていたから。小平太だって私が話しかければ寄ってきて、満更じゃなかった。まぁ、小平太の周りをうろちょろしていたくのたまが居たけど、あいつは私を特に怨んでいる様子はなかったから放っといても大丈夫。ちょっと横から入ってやればすぐに引き離せたんだから。

だけど姫様にならないかって言われた時は驚いた!
まぁ、確かに現代人の私がこの時代の女より造形が可愛いのは認めるわ。でも見もしない噂を信じてそんな事を言い出す城が沢山あるなんてウケる!この時代の人に言えるけど、皆ピュアすぎて何度笑いを堪えたか。

嫁に行けと言われた時には小平太を奪われて邪魔だから排除しようとしているのかと思ったけど、どうやらこいつは私の味方らしくて他のくのたまから助けてくれようとしていたみたい。まぁ女の醜い嫉妬でくのたまには余り好かれていないのは分かっていたし、忍たまにも嫌われたり殺されたりを避けるのはどうするべきかはずっと悩んでいたのよ。
あぁ、その前に皆に怖いと泣き付いてか弱くて守ってあげたくなる様なキャラは演じたけどね。あれは気分よかった。

どうしようかと考えていたら、あいつはいい事を教えてくれたわ。私を受け入れたいと言ってる城達は忍たまが多く就職するんですって。それを早く言ってよ!

そしてその中に見つけた、前に聞いていた小平太が内定を貰ったって言う城!そこへ行って姫様になれば、私は死ぬまで従忍夢が見られるじゃん。裏でこっそり秘密の恋をしたりして…美味しいいい!

そうと決まればすぐにやって来た城の使いの人。疑っていたから面倒だけど持ち物のデジカメを取り出して写真を取ってやった。無駄に電源入れなかったから、まだまだ使えそう。大喜びして2週間したら迎えを寄越すって言った。そうなったら私に残された事も一つ、あとの2週間で思いっきり忍たまを楽しむのよ!

だけど、その前に小平太の心をこっちに向かせておかなきゃね。まぁ大丈夫だと思うけど、私が居なくなった間に二人の関係が出来上がってしまっては困るもの。あいつ、あぁ、あきって言うの?あきはまぁ、私に協力してくれたし使える奴だったけど、小平太の傍を譲らない態度は許される事じゃないわ。態度で示して解らないようだったから、言葉でハッキリと言ってやった。
それでも気が付くと小平太の周りをうろちょろして、あーぁ、本当にわかんない奴ね。小平太は、私と幸せになるのよ?あんたなんて、くの一として短い命を散らせて終われば良いのよ。

…まぁ、どうせ短いならいつ終わっても同じか。








あー、今の私はとっても気分がいい!
伊作に作ってもらった毒薬は、面白いほど効いたわ!天上の国から地上の国で生きるための覚悟だから…って瞳を潤ませてお願いすればころっと言うこと聞いちゃうんだから、本当に昔もんはピュアッピュアだわ。

城から来た護衛も、「私の噂を聞いた者が毒を盛っていたら怖いわ」なーんて言えばすぐに毒味をさせるんだから。この世界に邪魔なものはもう無いわ。あとは卒業してくる小平太を待って、ずーっとずーっと幸せに暮らすのよ。戦うお姫様って言うのもいいわね。戦場を小平太に守られながら駆けたり…あーこれから楽しい事がいっぱい!!





「天女様」

「は、はい?」

「先程の、学園の生徒は…」

「あぁ、あきちゃん…。悲しいけれど、先を急いでくれと言われたから犠牲を無駄にせず進みましょう。彼女は、毒に苦しむ姿は酷いから森の奥で耐えると言って消えたんです」

「そうですか。…彼女が、天女様と約束があると言っていたのですが何の事でしたか?」

「ああ…」





あきが私にお願いをして来たのは二日目の、昨日の事だった。

『私は今回、天女様のお毒味などします。無いとは言い切れないので、もし事切れるような事があれば…手紙を忍術学園に届けて頂けませんか?』

そして現れた姿に思わず顔をしかめたけど、服の袖で隠した。息も荒く、鼻から血を流し口からは涎。顔は真っ青で私の言葉は聴こえていなかった。汚ならしい。必死に震える腕を持ち上げて手紙を手渡してきたけれど、私は受け取る時にちゃんと言ったわ。

『誰が約束なんて守るか。バーカ』

あきは手紙を受け取って貰えて笑顔を作っていたけれど、なんて滑稽な事。





「天女様?」

「え?あぁ、ごめんなさい。約束はね、忍術学園に死んだ事を伝えて欲しいと言っていたんです。私は地上の文字が見書き出来ません。申し訳ありませんが文を届けて頂いても良いでしょうか?」

「もちろんです。優秀な生徒を亡くしてしまい、こちらも文をと思っていましたから…。彼女は、此度の天女様を我が城へ迎え入れる事の出来た立役者だったので、キヌガサタケ城のくの一としてスカウトしようかと城主様が仰られていたんです。実に惜しい」

「そうだったんですか…」


あら。尚の事始末してしまってよかったわ。

手紙は、何が書いてあるかわからないし。万が一私の事を悪く書いてあるといけないから村で埋めてきたわ。だって私文字読めないもん。





大事。なものは手放しては駄目。
さぁ、幸せにしてあげる!

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