キヌガサタケ城から使者が来て天女様と話をしている様だ。
決定した事として噂は流していたが、実際はそう簡単に行く話ではない。天女様が城を決めただけで、キヌガサタケ城側にも選ぶ権利はあるのだ。

ただ、あそこの城主は好奇心旺盛で有名だから、天から現れた天女様などと手元に置きたくなる謳い文句に惹かれない訳が無いだろう。
帰りを聞き付けたので門に見送りへ向かった。私の起こした事なので、情報は持っておきたい。


「お帰りですか」

「あぁ、君は先日の!いやぁ、誠不思議な方だな。何か人を惹き付ける力がある。それに天上で使われていると言うからくりを見せていただいたが、あれは素晴らしい。城主様も気に入られる事だろう」

「そうですか。それは良かったです」

「天女殿と学園長殿には伝えたが、半月後に迎えの者をこちらへ寄越す。護衛が必要ならば、そちらから出して貰い構わない」

「了解致しました」


馬に乗り去っていく後ろ姿が見えなくなるまで頭を下げ続けた。あと半月。提示された終了にホッと息を吐いた。
あと半月したら、また全てが元通りになる。

門をくぐると庭の隅で話し込む七松君と天女様の姿。七松君が胸を叩き何か言うと、天女様が口元を押さえ可愛らしく笑った。風に舞った木の葉が天女様の髪に絡まって七松君が手を伸ばし―――。

それ以上は見たくなくて背を向け走った。





私のい。なんて小さな事。

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