「久々知兵助、豆腐」

「ありがとう」


今日も今日とて豆腐を献上するあき。兵助は差し出しされた瞬間から豆腐しか見えていない。しかしこの豆腐、どこから持ってきているのだろうか。


「懲りないなー。あきちゃんまた兵助に豆腐あげてんのー?」

「あきちゃーんたまには自分で勝負したらどうだー?」

「そうだーもので釣ろうなんて卑怯だー!」

「ふ、ふん。好きに言えばいいわ…私には私のやり方があるんだから!」


そしていつもの様にそれを見ていた八左ヱ門と三郎があきを野次った。あきは最初は腕を組んでツンとしているのだが、最終的には俯いて涙を堪え、野うさぎのようにぴょんと跳ねて逃げた。

くそぉ…くそぉ…!あいつら、いつか絶対泣かせて、やる!ひっく!


「あ、泣いて逃げた」

「あきも、いい加減兵助にいくら豆腐貢いだ所で意味ないって気付かないかな」

「な。最後に泣くのはあいつだしなー。確実に」

「まぁ、振られて落ち込んだら慰めてやらんこともないな」

「そうだな!」


兵助は、これまで幾度もの求愛を受けてきたが一度も実ったことはなかった。中には何故、断るのかわからない…というような美女から、兵助の性格を的確に突いて落とそうとする策略家までいたが、最終的には兵助が恋愛に興味が無くちっともなびかないので皆去って行った。
正直、あきの豆腐を貢ぐ作戦に勝機はない。そんな事は散々し尽くされた手だ。
だが、ガッツのある奴は好きだ。

愛のあるいじりだったがあきが二人を好きになる事はこの先一生ない。二人の態度が変わる事もこの先一生ない。






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