「ひっく、ひっく、…」


あきは泣き虫な自分が大嫌い。

昔から、少し注意されただけでも悲しくなってボロボロと涙がこぼれた。その事で近所の男の子に虐められた事もあった。だけど自分にとっても不本意で、決して泣いて逃げようとしているわけじゃないのにどんなに堪えようとしても溢れてしまう。そして一度出るとどんどん沸いて出て止まらなくて、喋ることも上手く出来なくなる。そんな自分が大嫌いだった。

今日も、授業で失敗してしまい班の子達に迷惑をかけた。皆気にしないでと言ってくれたけど、自分が悔しくて情けなくて鼻の奥がツンとした。泣いてしまったら、嫌われる?呆れられる?私だったら、また泣いてるよ。面倒臭い奴。って思うもの。皆もきっとそうだ。
そんな事を考えると益々涙は止まらなくて、あきはひっそりと煙硝蔵の裏で膝を抱えて泣いていた。


「おい、どうした?」


人の気配に気付かず驚いて振り返れば、そこにも驚いた顔の男が居た。こいつ、成績が優秀なので有名な奴だ。


「何でもないから放っといて」

「何でもないなら、隠れて泣いたりしないのだ。本当に何でもないなら堂々と泣け」

「堂々と泣けですって…?泣くことは恥なのに、堂々とできるわけないじゃない!!」


何を言っているんだという気持ちと泣き虫の気持ちをわかってない苛立ちであきは怒鳴るように返した。


「恥?恥なのは、泣くことじゃない」

「な、何よ…じゃあ何が恥だっていうのよ…」

「お前が何で泣いているのかわからないから、何とも言えないが…恥だと思ってるそのものが恥だと思う」

「??」

「いや、だから何と言えば…泣くのが恥だと思うのは、自分にとってそれが負い目になるからだろう?泣く行為は良いも悪いもないんだからそれは自分の気持ちの問題なのだ。泣いた理由を自分で探す時、どうしても心のどこかで自分の落ち度を探すだろう。自分でしか自分は制御出来ないのに、その自分が肯定してやらないからどんどん泣いた事が嫌な事になる。…聞いてるのか」

「聞いてるけど…よくわからない…」


自分自分と聞きすぎて聞いてる間にこんがらがってしまった。


「まぁつまり、もっと自分を許して楽になればいいのだ。お前はお前としてちゃんと生きてるんだから。泣くのもお前の個性だろう」


そんな事初めて言われたあきは驚き彼を見つめる。気が付いたら泣き止んでいたらしく、泣き終わったならさっさと行け、湿り気厳禁だぞ。とどこかへ行ってしまった後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。
いつも泣いて慰められるのも嫌で、泣くのは一人でしてきた。心がこんなに軽くなったのは久しぶりだ。


「久々知、兵助…豆腐が好きだったはず」


今度、お礼に持っていこう。手作りだったら、喜ぶだろうか。まずは作り方から調べなければ。

あきは知らない。これが恋に繋がる事を。







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