「で、君は私のどこが好きなんだ?」

「えぇ…そういう事言う…?」

考えさせて貰っているのでな、と至極真面目な、というか感情の見えない顔で言われた。
先日の告白から数日が経っていたが、鉢屋くんからの提案で週に何度かこうやって、朝食よりももっと早い陽の出たばかりの時間に喋っていた。
正直、最初にその提案を聞いた時には嬉しすぎて頷き倒したが、忍らしく朝日と共に起床…とかそういう事ができない私は鉢屋くんと会うときは一睡もせぬまま待ち合わせ場所で座って待つという苦行のような事をしていた。ツライ、眠い。相当酷い顔をしているだろうな私…好きな人に会うときが一番悪い時って…なんと報われない…。大体今の私って何なんだろう?恋仲にもなれず、友人にもなれず、面接でもされているかの様な視線…。結果は採用・不採用の二択でこれが終わったら何の爪跡も残せない気がする。


「わ、私が御社の事を気になったきっかけは…」

「御社って何だ」

「すいません。ちょっと頭飛んでました」


眠くて思っていたことと混ざってしまった。危ない危ない。鉢屋くんはやっぱり感情の見えない顔で私を見ている。私こんなんで彼に好いてもらえるんだろうか…。


「鉢屋くんの、性格が好きです」

「ほぉ…大木は私の性格をわかっているのか」

「すいません。語弊がありました」


もう怖いよ!一つでも選択間違えたら命取りみたいなこれ何のギャルゲー?もう怖い、怖すぎる。まぁそれでも好きだけど…言わせんな…馬鹿…。寝不足の軽い躁状態で思考をふわふわさせていると鉢屋くんに睨まれた。すいませんでした。謝ってばっかりだ。


「あのぅ、すいません…」

「何が」

「最初は鉢屋くんが嫌いでした」

「…で?」

「鉢屋くんて、変装名人って呼ばれてるじゃないですか。素顔も誰も見たことないって聞くし、あー、こいつ調子に乗ってる奴か。学園に居るのに友達にも素顔隠して本気で仲間作る気ないんだわ、上から見下して馬鹿にしてんだわ。…と思ってました。」

「い、言うな…仮にも好きな奴相手に…」

「でも先日、何があったわけでもないんだけど、授業中意識飛ばしてたら、急にね、別に一匹狼気取ってるんじゃなくて、アイデンティティーなのでは?って思って。見かける度に観察してたらまぁ変装こそ完璧だけど顔に性格滲み出てるし友達後輩の面倒見いいしくのたまの荷物運ぶの手伝ってたりとそういう人間味のあるところを多々目撃してく内に好きになりました。」

「…それって嫌いな奴が実はいい奴だったと気付いただけだろう?何で付き合いたいとまで思う」

「何でって…人のために無償で動くっていうのが私にはできないから、憧れ?あ、いや、違うかな。そんな鉢屋くんに尽くしてみたいと思ったからですかね」


鉢屋くんの面接は続く。そんなに信用ならないのか…?私の顔か?表情に出てないのか?必死さがないと面接官のウケは悪いからなぁ。目に力を込めて真剣な表情を作ってみるが、鉢屋くんは何か考えていて見てくれてなかった。こっち向いて。


「なるほどな…尽くしたいか」

「納得してもらえましたか…?」

「あぁ、すまないな野暮な事聞いて。わかった、じゃあ、私も大木に尽くしたいと思うようになったら付き合おうか」


そう言って鉢屋くんはニヤリと笑ってポン、と頭を撫でた。あ、やばい。この具体的にちゃんと考えてくれるとことかもう


「鉢屋くん」

「何だ?」

「私、ますます好きになりました」



私の言葉に鉢屋くんはきょとんとした後、少しだけ柔らかく笑ってくれた。






2013/07/24

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