「ていうか、授業中の用具倉庫に貸し出しなんて来るわけないし…」


あ、だから罰なのか?時間が進まないし、立ってなくてはいけないし、まぁ苦行と言えるか…だけど、鉢屋くんを寝ずに待っていた時の方が余程しんどかったし、精神的にも緊張でどうにかなりそうだったし全然楽だな。あれ、もしかして罰だったんですか?
昨日の実習は、結局くのたまが、というか同室の友人が最後まで逃げ切ったらしいのだが、私が問題を起こしてしまったせいでご褒美はなくなった。くのたまの皆は、一人を除いてそんな事より顔半分内出血と腫らした頬で帰ってきた私を心配してくれた。除いた一人は、もちろん同室の友人だが。すごい睨まれた。恐かった。でも、目が潤んでて、心配で怒ってくれていたらしいので、なんだかんだ可愛い奴だなぁと思う。


「あーぁ。しかしあいつ、本気で殴りやがって…。痕が残ったら、責任取らせてやる。一生年貢を納めさせてあげよう…」


自分で予想した以上に腫れ上がった顔は、私は見ていないが、手当てした新野先生が困った顔をしていたし、門で出会った小松田さんにおばけと間違われたのでよっぽど酷いらしい。少し力を逃がせばよかったなぁ。
もし鉢屋くんとまだ話せていたら、こんな顔を見せねばならない所だった。あ、もしそうだったらあの三人の会話も聞き流してたかもなぁ?正直、お前らのせいで…という八つ当たりもあったし。
まぁ、告白しておいて最初は鉢屋くんが嫌いだったと言ったのは私だし、そんな事言った奴に、やっぱり馬鹿にされたと思ったら相当頭に来ただろう。私だってそんな事されたら、もう二度と視界に入れたくないと思うだろうしな。

だから、卒業までの二年間、彼には二度と近寄らない。皆に手を貸す優しい彼に尽くしてみたかったけれど、それはもう出来ないし、せめてこれ位、好きな人のためにやって見せよう。
というわけで、早速向こうからやって来た鉢屋くんから私は素早く逃げた。貸し出し番?授業中くらい、セルフだよセルフ。







「くそ、逃げられたか…」


用具倉庫の入口に、貸し出し表が吊るされていた。確かに先程まで、ここに居たはずなのだが。
大木に対して、怒りに任せて酷い事を言った。だから、避けられているのだろう。まぁ当然だ。嫌われていたっておかしくはない。だが、嫌いな奴を身を呈して庇ったりはしないだろうから。

私はたとえ避けられていたとしても、嫌がられても、大木を捕まえてやる。



鉢屋三郎を甘く見るなよ?





2013/07/29

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