「あ、いたいた。三郎、実習終了だって。い組はもう集合してるから、ろ組回収よろしくー」

「わかった。どっちの勝ちだ?」

「くのたまだって。全員見つからなかったみたいだね」


今日は結構時間が掛かったが、やはりくのたまが逃げ切ったようだ。終了は学級委員長が伝える事になっていたので勘右衛門は今回鬼ごっこに参加せずに先生と行動していた。私も雷蔵とは仕方なく離れて行動していたのだが。


「じゃあ俺、は組の学級委員長探してくるから」

「おーい!!」

「…手間が省けたな」


は組の学級委員長が慌てた様子でこっちに駆けてくる。何かトラブルでもあったのかもしれない。自然と勘右衛門と私の顔は引き締まる。


「大変だ!うちの組の奴等がくのたまと喧嘩してるんだ!」

「え?喧嘩って…」

「殴り合いしちゃってるんだよ!先生はどこだ?!」

「落ち着け。それ、くのたまは大丈夫なのか?先生は私が呼んで来てやるから、とにかくお前は喧嘩を止めさせろ。勘右衛門も行ってくれ」

「わかった。行こう」

「ああ、こっちだ!」


くのたまと殴り合いの喧嘩とは、何があったにせよよっぽどだな。実習が終了したら山道の入口に集合予定だったから先生はそこだろう。急いで報せるために地面を大きく蹴った。










「な、なんなんだこのくのたまめっちゃ強いな…」

「おい、仮にも三対一だぞ…」

「は、はぁ、疲れたなら、さっさと負けを認めなよ。そして鉢屋くんに謝れ」

「だから、何でお前に命令されなきゃなんねぇんだよ?!」


くそぉ…さっきから、押しも押されもしないままこの状態だ。最初は結構優勢だったけど、相手は三人だしチームワークを組まれると攻撃しずらい。三人で囲ってこない所は、あほのは組と言われる所以だろう。自分達の攻撃力を頭でわかってない。本能で理解してるようだが。


「大体ね、あんた達鉢屋くんの何を知ってるの?話したこと、あるの?」

「ねぇよ。でも、見てたらわかるだろ。あいつは馬鹿にしてんだよ」

「私も、最初はそう思ったけど、でもそれは、噂を聞いただけの時よ。見たら違うってわかったよ。鉢屋くんは、そんなんじゃない。世話焼きだし、面倒見もいいし、ただの忍たまよ。そんなのはあんた達が、あほのは組って言われてるのと一緒だよ。まぁ、あんた達は、本当にあほだけどな」

「こ、こいつぅ…俺たちの気にしてる所を…!」


一人が怒りに任せて殴りかかってきた。こんなのは簡単に避けれる。けど、そろそろさっき遠目から叫んでたこいつらの友達が誰か呼んで戻ってくるだろう。


「っ!…ったぁ…、」

「ふ、ふん。くのたまが忍たまに喧嘩を売るからこうなるんだよ!」

「お、おい…一応女だぞ」

「先生にばれたら、ヤバくねぇ?」


思い切り頬を殴られて吹っ飛んだ。これは、一週間は腫れてるな。


「ふふ…。殴ったな?」

「な、なんだよ…」

「コワイ…!」

「あんた達、くのたまの顔に傷付けて罰がないとでも思ってるの?」

「「!」」


くのいちは、顔だって大切だ。五年になって校外実習も増えた私の顔を殴るなんて、忍たまだってタダじゃ済まされない。まぁ私もだけど。本当に私は性根が腐っている。だけど、それが私だ。いつだって打算的で、自分をよく見せようと人の目を気にして生きている。そんな私が初めて誰かのために動いているのだ。まぁ、もう意味はないかもしれないけど。
慌て出した忍たまに、私はにっこりと微笑んだ。


「助けてあげても、いいよ?」




2013/07/28

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