実習が始まってどの位経つだろうか。私は、隠れやすい木を選んで木の上に潜んでいた。鬼ごっこと言っても、今回鬼が忍たまなので非常に多い。大体の子は見つかったら逃走のスタイルを取っていると思う。
鬼ごっこの実習は、全員捕まったら終わり。なんだけど…くのたまは一人でも捕まらず残ればご褒美が出るので易々と捕まるわけにもいかないのだ。同室の友人が、「手を抜いて捕まるなよ。鉢屋と鎖で繋ぐぞ」と脅してきたので私は例え捕まったとしても、精一杯足掻いたことを証明せねばならない。でもその場合、捕まる忍たまも選ばないといけないし…尾浜くんあたりに捕まっても、私を捕まえるの大変だった。なんて言ってくれそうにない。久々知…いや、不破くんがいい。捕まるなら不破くんだ。
そんな事を考えていたら、グループでこちらにやってくる気配がした。先に移動しようかと思ったけど忍たま側の動向も知りたいので息を潜めた。


「くそ、くのたまの奴等しぶといな」

「あと二人だろ?時間の問題だろー」

「だな。」


忍たまは三人組で、木の幹に背を預けて一息ついた。ふふん、あと二人とは私と同室の友人だろう。私達は意外と優秀だから。こいつらは私に全く気付いてない。むしろ休憩とばかりに腰を下ろして竹筒の水を飲んでいた。こっちは厠に行くのを抑えるためにも我慢しているのに…くそぉ…。こういう所でくのたまと忍たまの確執は増えるように思う。いつでも動けるように腰を浮かせて潜んでいたら、とんでもない会話が聴こえてきた。


「なぁ、今日の鉢屋見たかよ」

「あぁ、ちょっとはプライド傷付けられたんじゃないか?何も言い返して来なかったしな」

「え?何だよ、鉢屋がどうしたって?」

「今日さ、鉢屋が一人で居たから不破と間違えちゃって、得意気にするからお前は何でも不破の物真似して個性のない奴だなって言ってやったんだ」

「大体あいつ、素顔も見せないし。天才って呼ばれてるからって人を見下して、調子に乗ってんだよ」

「あー、確かになー。不破の事だって、実は馬鹿にしてんじゃねぇ?」

「ははっ、かもなー」


その会話を聞いてやっとわかった。鉢屋くんは、私にも馬鹿にされたと思って怒ったんだ。そんなつもりはなかったけど、こんな事言われた後ではそう思われても仕方ない。それに、ちょっと前まで私も彼らと同じだった。こういう風に鉢屋くんの事を思っている人は居てもおかしくないかもしれない。
だけど、


「ねぇ」

「ん?あっ!くのたま発見!!」

「何自分から出てきてんだよ。俺らの事なめてるのか?」

「捕まえたければ、捕まえたら?どうでもいいわ。それより、あんた達…」


私はもう、鉢屋くんに嫌われてしまった。もう関わる事はないだろう。人の考え方なんてそれぞれなんだから、放っておけばいい。だけど。
私はそうは出来なかった。






「鉢屋くんを、馬鹿にしないで!!!」







2013/07/27

back
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -