「おい…誰か説明しろ」


勘右衛門の友人達は戸惑っていた。朝から機嫌が悪くて、三郎を殴るだけ殴って居なくなった勘右衛門が機嫌良く戻ってきたと思ったら知らぬくのたまと手を繋いでいるのだ。
今は長屋の廊下に並んで座っているのだが、しかし近くないか。他人の目とか気にならないのか。身を寄せ合い耳元で囁きあう二人の姿に見てるこっちが恥ずかしくなって皆目を泳がせた。ちなみに二人はいつもこの距離だったので平然としている。慣れって恐い。
勘右衛門からそう言った、恋愛やらの話を聞いたことがなかったのでこれには全員驚いていた。三郎に至っては昨日の会話の今日だったので頭にハテナが浮かんでいる。


「勘ちゃん…その子は誰なんだ?」


最初に声を掛けたのは兵助だった。全員がそれに続いて頷く。勘右衛門はしまりのない顔で笑った。


「えへへー、俺の彼女。付き合う事になったんだぁ。ねー」

「えへへ…、ねー」

「えっ!」

「い、いつの間に…!」


皆が驚く中、兵助だけ違うことを考えていた。


「勘ちゃん、いつから知り合いだ?」

「んー、四年になってからかなぁ」

「わかった。」


兵助の中で一つの疑問が解消された。
勘右衛門がいつからか喋り方が変わっていた。以前はもっとハキハキと受け答えしていたそれが少し間延びした、優しい口調になったのだ。一体何の影響だろうかと兵助は口に出さずに疑問に思っていたが、今喋った感じで彼女の言葉遣いがうつったんだろうと思った。


「よかったな、勘ちゃん。」

「いや、よくない!話が見えない!!」

「そうだ!喋ってる所なんて一度も見なかったのに!」

「まぁまぁ、いいじゃないか…」


兵助の言葉に、何かをわかってくれていると感じた勘右衛門はありがとう、と笑顔で返した。


仲が良いなぁ。あきは見ているだけで楽しそうで笑った。
こうやって、友達に紹介するから!と言ったのは勘ちゃんで、今までの事を挽回したい気持ちもあるんだろうな、と思って恥ずかしいけど了承した。ひとしきりじゃれて再びこっちに戻ってきた勘ちゃんの服をクイクイ、と引っ張る。


「ん?」

「勘ちゃん、またこれからも夜会ってくれる?」

「それはもちろんいいけど、夜じゃなくてもいいんだよ?」

「ううん、あのね、」


何やら耳元で囁いたあきの言葉を聞いて、勘右衛門はガバッとあきを抱き締めて勢い余って押し倒すのを友人達は見ていた。


「…今日の夜、覚悟しておいて。」

「えへへ…うん、はい。」








AM01:30








「昼の勘ちゃんも好きだよ?だけど夜の勘ちゃんの方がドキドキするの。」




end
2013/07/23

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