「勘ちゃん」

「あき」


いつも夜になり消灯時間が過ぎて寝静まった頃、私達は抜け出す。

抜け出すとグラウンドの端にある大きな岩の下で待ち合わせて、どっちが早い日もある。
ちなみに雨の日は待ち合わせはない。


「行こうか」


差し出された手を繋ぐとぎゅっと握り返してくれる。
少し顔を見つめて、それから勘ちゃんが手を引いて歩き出す。

私達には決まったやりとりだった。



だけど、これってどういう関係なの?



付き合ってとも好きだとも言われたこともないし、手は繋ぐけどそれ以上はない。
更にこうして名前を呼んで目を見て話してくれるのは夜の時だけで、日中は目が合っても笑いかけても話しかけてもくれない。何か見えない暗号とか矢羽根とか送られてるかと思ったけどやっぱりなかった。

勘ちゃん何考えているんだろう?最初に疑問に感じたときに聞けばよかった。考えてる間に時間は過ぎてしまってそれが暗黙の了解の様になってしまった。
なんかもう聞くに聞けないよ今更すぎて…。


「あき、ここおいで」

「うん、」

「…なんかいー匂いする。」

「えっ、匂いするかな?お風呂入って来たんだけど…」

「……そっか。でもあきの匂いって感じ。俺は好きだな。」


先に座った勘ちゃんに手を引かれて隣に腰を下ろす。
肩と肩が重なりあうくらい近くて、喋る吐息が頬にかかる。

恥ずかしいなぁ、嬉しいなぁ。
もっとくっついて、正面からぎゅって抱き締めてほしい。
口付けだってしてみたい。

だけど、今の関係を変えてしまっても勘ちゃんは一緒に居てくれる?



…たぶんダメなんだろうなぁ。










風呂に入ってから来たと言われた時には一度退席させて頂いて、もんどり打って引っくり返ってやろうかとも思ったがなんとか堪えた。俺エライ。
あぁ、あき。君は何を思って風呂に入ってから会いに来たの?もしかして期待してくれてる?それとも何も考えてないのか。いや考えてないな。あきだし。

一年の頃から好きだった。
いつか合同授業とかで関わる時があったら積極的に仲良くなろう!
とか思っていたら関わる事なんてまったくなかった。合同授業は上級生だけだったし委員会もくのたまは参加しないし。なんて事だ。
だから四年生になって初めての合同授業の時に今まで抑えていたのと焦りで凄まじい行動力で無理矢理友達になり夜に会う事を取り付けた。暴走とも言う。

出来た程順調すぎた。手を繋いでも身体をくっつけてもあきは照れるだけで嫌がりはしなかったから。

だけど押せ押せばかりではいけないらしい。
皆で行ったお団子屋の娘が言っていた。押されて引かれると女は気になるものなんですって。兵助を狙ってたみたいだけどあいつはダメだよ。豆腐しか見てないから。

とにかく俺はそれを聞いてからそれ以上の事は抑え、夜はそんなに我慢できないが日中は俺にしては我慢した行動をしていた。
あぁ、本当は寂しそうなあきの顔なんて見たくないよ。俺から走り寄って行きたいんだ。でも、我慢我慢。
俺はいつかあきから言い寄られるのを期待してにんまり笑う。



でも、もうそうし始めて一年は経つけど、本当に効果あるのかなぁ?











2013/07/11

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