ご主人様の友達もご主人様?





「作兵衛。悪いが用具倉庫から釘を取ってきてくれないか?」

「わかりました!」


用具委員会で小平太がバレーボールを打ち込んだせいで雨漏りがする、という屋根の補修をしていた。
一年生には危ないし人数が必要な訳でもなかったので、三年の富松作兵衛と行っていたのだが
用具倉庫へと走らせた作兵衛の支えがなくなった為はしごは非常に不安定だった。


「っ、やべっ…!」


ぐらつくはしごに、倒れる、と思ったがいつまで経っても傾くことは無い。
不思議に思い下を見た食満は原因を知り顔を緩ませた。


「食満先輩、地面がぬかるんでるので危ないですよ?」


笑顔のあきがはしごを支えていた。


「悪いな。作兵衛が直に戻って来るんだが」

「じゃあそれまで手伝います!」


この後輩の判断基準は友人の伊作が全てではあるが、保健委員会など伊作と関わるものには柔和に対応しているところからして
俺も伊作の大事なものとして認識されているようだ。
あきに笑顔しか向けられたことがない身としては、行き過ぎた言動もあるがまぁ、可愛い後輩と言える。


「伊作の所へは行ったのか?」

「善法寺先輩は学園長先生に呼ばれて庵に。付いて行ってはだめだと…ですが!行っている間これを預かっておいてと渡されたので!!お留守番中です!!!」


言いながらしゅん…としたかと思ったら次の瞬間にはキラキラと瞳を輝かせる。
なにこの生き物かわいいなおい。食満はなでくりしたくなった。


「…ん?それって」

「はい?何か、腰痛や打ち身によく効く湿布を新しく作ったそうで、学園長先生にお渡しする分の余りみたいです。」

「ああ、知ってる。…あいつ俺達の部屋でそれ作ってたからな」


覚えのある匂いだと思った。


「そういえば。この湿布を学園長先生のご友人にプレゼントしたいので善法寺先輩と食満先輩でおつかいに行ってきてくれと仰ってましたね。」

「そうか」


この年でおつかいとは。どこへ持って行けというのだろう。
しかしさらっとあきは言っていたがこいつ結局付いて行ったんだな。
伊作に付いてくるなと言われた手前盗み聞きしたんだな。
まぁ怒ることでもないから言わないが。それ尊敬超えてるからな。違うジャンル踏み込んじゃってるからな?


「食満先輩羨ましいですー変わってくれませんあっ!!」

「ハハ、ってあ?…あ゛!?」

「善法寺せんぱーーーーいっっ!!おかえりなさーいーーー!!!あきは!お留守番のあきはここです!!!!」

「おっおいいいぃぃ!!!?!?」


あきの視線の先を見れば遠くに米粒大の伊作が見えた。
素早く手を放して駆けていくあきに油断していた食満ははしごの下敷きになりながら倒れた。
所詮は仲の良い先輩といえど、伊作の前には全て無いに等しいのだ。


「留三郎っ!!大丈夫!?」

「食満先輩いぃ!!こんな時には善法寺印の湿布を!!打ち身にも効くはず!!!」

「まさか実験台にするためじゃねぇだろうなゴラ?」

「留三郎うう!!!あきの頭メリメリ言ってるから!!!!!」






2013/07/05


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