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あきが姿を現さないまま一週間が経つ。
伊作は最初の数日は気にしないでいたが、流石に何かおかしいと気付き始めた。
もしかして、綾部に言われたことを気にして落ち込んでいるのでは?特別ではない自分なんて善法寺先輩に近寄ることすらおぞましい…くらいはあきなら考えていそうだ。今まであきの落ち込んだ所は見たことないが(伊作が説教をした時はその場一瞬だけですぐ回復するため)、周りへの対応から何となく想像がつく。
そして数日伊作はあきを探していたのだが、全く姿を見かけない。
思い当たる所は回ったのだ。
グラウンドの綾部の穴密集地帯、保健室、食堂、用具倉庫、薬草園、
「…って、これは僕がよく行く所ばかりじゃないか。」
そこまで回ってようやく気が付いた。
伊作は今まであきと出会っていた場所が、伊作の用のある場所ばかりで、あきが行きそうな場所ではないと。
あきが行きそうな場所なんて、知らないんだ。
ふと、薬草園の向こう側にくのたまの頭巾が見えた。
「ちょ、ちょっと君!」
「ぅわっ!!善法寺伊作先輩…、こんにちは。どうされました?」
「あの…あきはどうしてる?」
くのたまに見覚えがあった。彼女は、食堂であきと会うときによく一緒に居たように思う。
「あぁ…何かいつもとは違ってこっちも扱いに戸惑ってるんです。元気は元気ですよ?でも、授業はちゃんと受けてますが、それが終わればすぐ部屋に籠るか裏山へ行ってしまうので…先輩こそ何か知りませんか?」
「いや…僕も詳しくはわからないんだ。ありがとう。」
また一人になった伊作は傍にあった木に登ってみた。あきは何かと高いとこらから登場していたから。
「あき…何を思い違いしてるんだか」
自分がどう思われているかなんて、真っ先に僕に聞きに来ればいいじゃないか、今まではそうだったろう?
そうすればちゃんと、
「答えてやるから、早くこい…」
一年前からあきがこんなに伊作から離れるのは始めてだった。
伊作からしてもそれは同じ。
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