「…あっ綾部!」

「おやまぁ。善法寺先輩、めずらしいですね。」


綾部は自分で作った落とし穴のトシコちゃんを覗き込んでいた。穴の中には善法寺伊作の姿。
因みに綾部の言っためずらしい、とは落とし穴に落ちている事がという意味ではない。


「いつもはあき先輩がすぐ引き上げているのに、」

「ありがとう。あきには昨日から会っていないんだ。綾部は会ってないか?いつもほら、穴を掘るなー!ってあきが言いにくるだろう?」

「そういえば、今日は見ていないですね。」

「昨日は見たかい?」

「ああ、昨日は…」


綾部は昨日の事を思い出す。昨日は見たな。しかも少しあき先輩の痛い所を突いてしまった様に思う。背中にどんよりと書いてあったから。


「先輩なら、いつもの如く善法寺先輩がターコちゃんに落ちた事の文句ついでに保健委員は善法寺先輩の所有物だから保健委員会通る所に穴を掘るなよと仰るので僕は保健委員の通る所に穴を掘っているんじゃありません。僕が穴を掘った所に保健委員がやって来るんですと言い…」

「綾部、いつものくだりはいいからその先を教えてくれ…」

「あき先輩は善法寺先輩の、あき先輩の言う所の所有物ではないし、一体何なんですか?と質問したところ非常にわかりやすく落ちこんでとにかく穴を控えろと指示されてどこかに行かれました。」

「……あぁ、そういうこと、言っちゃったか…。」


大方、綾部に指摘された事で悩んでいるのだろう。
まぁその内ひょっこり何事もなかった様に現れるだろう、と伊作は深く考えなかった。




しかしそれからいつまで経ってもあきは現れなかった。







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