「………」

「あの…七松課長?」

「大木」

「はい?」

「ばか」

「!?」


コーヒーを手渡しても動かない課長がやっと口を開いたと思ったら…ば、ばか!?なんで…!私何かしちゃったのかな…。ショックで固まっていると七松課長は腑に落ちない様な表情でうーんと唸りながらくるっと向きを変えて行ってしまった。ちょ、ちょっと…言いっ放して行くな…気になるじゃん…!!課長の態度を見る限り怒っているわけではなさそう?だし、暫くその場で小さくなる背中を見つめていたけど課長が一度振り返ってハッと我に返った。


「おーい、入らないのか?」

「は、入ります」

「ん」


扉を開けたまま待ってくれる課長に慌てて行く。やっぱりいつも通りだし…さっきのは何だったんだろう。思わずじっと七松課長を見ながら課長の腕の下をくぐると首を傾げられた。いや、私がそうしたいぐらいなんですけど…。


「大木」

「は、はい?」

「お前、もっと」


「小平太くん、ちょっといいかな?」

「あ、うん」


私達の少し離れた所から遠野さんが書類を持って近付いてくる。課長は声に反応してすぐにそっちに向かってしまった。



…もっと?



 
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