「………、っ?」
突然感じた違和感に開かない目をこじ開けると七松課長がぼやけるほど至近距離に見える。外はまだ薄暗いから、明け方だろうな。て言うか…これ、キスされて、っ
「は、ぁ…かちょう…」
「あき、もういっかい」
「………」
やけに静まり返る部屋の中むくりと起き上がる。布団に課長の姿は無い。あれ…?て言うか、何かやけにカーテン越しの日差しが眩しい様な…。嫌な予感がしつつ窓を見ながら携帯を探っているとカサリと何かが手に当たる。見るとメモ帳が豪快に千切られた切れ端があった。
『無理なら休んでよし』
隣にあった携帯を開く。時間は始業時間の20分前だった。ああ、そっか…今日休んでもいいんだぁ………。
……………。
「って訳ないでしょうがーーーー!!!!!!遅刻するうううううう!!!!!!」
慌てて体を起こすとスーツに着替えて鞄を引っ付かんで飛び出した。私、今の動き人知を超えていると思うよ!!!課長も気の使い方間違ってる気がする!!!昨日は足りなかったのか明け方からまたあの…ね!その…ね!だから起きれなかったりしたんだけど…会社で私の事聞かれたらどうすんのかな!?「ああ、腰が立たないみたいで休ませた!」とか言っちゃわないかな!!?……言う。課長なら言うぞ…!
「ッハァ、ハァ…っ」
会社のロビーに辿り着いて膝に手を着いて呼吸をする。じ、時間…あと10分ある。今日のわたしすごい…!ただもう足がガクガクしてる。身体が震えるほど全力疾走したのいつぶりだろう…取りあえずエレベーター使う。もう無理…それでお茶でも買って一息吐こう。時間が時間なので利用者の居ないエレベーターに乗り込む。あー、髪がボサボサ…会社にヘアゴムあったかなぁ。チン、と到着を知らせる音で顔を上げると、乗り込もうとした人と目が合った。
「あ…あきちゃん!」
「おっ、おはようございます…遠野さん」
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