課長の顔が近付いて来て、それに応えるように目を閉じる。課長、笑顔になってくれて良かった。松野さんにはからかわれてばかりだけど明日から全力で無視して報復しようと思います。後輩に相手にされずにショックを受ければいいわ!て言うかね、

課長、いつキスするんです!?

全然待っていてもキスされない。あれ、もしかして私の勘違いだったのかな!?恥ずかしくて逆に目が開けられない…!ゆっくりゆっくり目を開けるとすぐ目の前に七松課長の顔があってビックリした。み、見られてた!すごい見られてた!!!


「か、課長…!!からかわないで下さい!」

「ん?なあ大木」

「え、あ…はい」

「今日は、お前からして」


恥ずかしくて抗議の声を上げたのに思ったほど取り合われなくて力が抜ける。今日は、お前からして…って!?
ハッとその意味に気付いて顔が熱くなる。ずいっと顔を近付けられて焦る様に肩を押し返したけどやっぱり全然意味がなかった。


「ほらー」

「え!?ちょ、でも!わ、わかりません!」

「いっつも私がやってるの真似すればいーだろ?」

「そ、そんな事…っ」

「嫌なのか」

「いっ、嫌な訳じゃ…あーもう!や、やります!」

「よし、来い!」


な、何と男らしい…。課長の肩を掴むと目を合わせる。ジッと私の動きを見守る視線にますます熱が上がる。無理だ!


「か、かちょ…目、閉じてください…」

「ん!」


嬉々として目を閉じた七松課長に心臓に矢が50本くらい突き刺さった気がする。深呼吸をすると気持ちを落ち着かせて顔を見上げた。え、えっと…課長はいっつもどうしてるかな…て言うかすごい恥ずかしいんですけど…!
ふと目を反らした先に課長の耳があった。酔ってるからかほんのり赤い…。いつもは課長に見つめられると目が反らせなくなるから、何だか初めて知った様な気分だ。そっと触るとピクリと課長が反応した。…何か……。そのまま誘われるように耳に近付いて耳たぶをチロリと舐めた。また、課長の肩が揺れる。こ、これって、気持ちいいのかな…?私はあのアレ、あれなんだけど、もしかして課長も…?もう一回してみようと顔を近付けると肩を素早く押し返された。


「………」

「あ、す、すいません。嫌だった…」

「ちがう」

「っぅひゃあ!!か、課長!?」


突然立ち上がった課長に担がれて視界がぐるんと回る。そのままズンズンと歩いて、一回戻って部屋の電気を切ると真っ暗な中またズンズン進む。訳の分からぬまま担がれているとゴロリと下ろされたのは布団の上だった。


「あ、か、課長」

「…言っておくが、煽ったのはお前だからな」

「っあ、ん…!」


覆い被さった課長が囁いて耳に口付けた。



 
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