「な…何って」

「さっきから、何の話をしてるのかわからないぞ!主語を話せ!」

「ほ、…」


課長は真剣に顔を近付ける。ほ…本気で言ってる顔だ!本当に解ってないんだ!こっちの精一杯の告白を読まずに打ち返された感じだよ。って言うかその言葉課長にだけは言われたくない。


「だからっ、遠野さんと七松課長の仲を応援しますって言ったんです!こ、こんな事二回も言わされるなんて…」

「だから、それが分からん!奈津と喧嘩なんかしてないぞ」

「だから!私っ…聞いてます、七松課長が遠野さんの事好きだったって…」

「………」


顔を掴まれたまま言い合っていると私の言葉に課長はピタリと口を閉じた。そ、そうら…わかったか!伝わった事への達成感と同時に、やっぱり滝先輩の言っていたことは本当だったんだと胸がぎゅうぎゅうと締めつけられる。もう嫌だ、逃げた


「それは一体何の話だ」


い………って……?


「え?え?」

「奈津を好きって、私がか?」

「え?はい、そうなん…ですよね……?」

「一応聞くが、女としてって事だよな」

「はい…」


顔を掴まれたままじっと見つめられて空気が抜けるように返事をすると、課長は顔を上げてうーんと唸る。そしてそれからまた顔をずいっと近付けて口を開いた。


「思い返しても、そんな事ないぞ!」

「ええ!?だ、だって滝先輩がっ…!!」

「滝夜叉丸が、私が言っていたと言ったのか?」

「…あ、いや、それは違います、けど…」

「じゃあ違う!私が言ってるんだ、私を信じないか」

「で、でも今日七松課長言ってたじゃないですか!遠野さんの方がいいって!」

「え?言ってないぞ…」

「言いましたよ!エレベーターホールで!」


強く主張すると顔を持つ手を緩められる。あ…盗み聞きしてた事言っちゃった…え、ええい気にしてる場合じゃない!真っ直ぐ見つめると課長はきょとんとした顔を思い出したように変えた。


「ああ。何だ、聞いてたのか?」

「は、初めっから盗み聞きするつもりは…」

「確かに言ったな」

「……っ!」


課長の言葉に泣きそうになってグッと下唇を噛むと少しだけ課長が目を見開いた。それからすぐ親指で唇を撫でるようにして開かせると嬉しそうに笑う。何でそんな顔、


「私は、大木が奈津ぐらい固くならずに話せばいいなと言ったんだぞ」

「え…」

「何だ、お前もしかして妬いたの?」

「……!」

「かわいーな」

「っあ、課長、待っ、!」


首の後ろを引き寄せられて何をされるか気付く。けど待ったを聞かずに唇が塞がれた。


 
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