「質問があります」

「許可する」

「どうして、体育祭終わったのに用具委員会手伝っているのでしょうか?」

「大木が思いの外器用でついな」

「えっ、そ、そうかなぁ…!」


照れくさそうに頭をかくあきにこのまま流されてしまえと留三郎は密かに思う。実際あきは男ばかりの委員会に現れた救世主であった。細かな所にも気が付くし後輩と組ませておけば安心して自分の作業に集中できる。


「大木、お前日曜大工の才能あるぞ。このまま用具委員会に入らないか?」

「さ、才能…本当に?」

「おう。小平太担当にしてやっから!どうだ?」

「な、七松くん担当…!って、ちがーう!!」


突然ぶんぶんと頭を横に振りはじめたあきはバチン!と自分の顔を叩いて目を覚ます。思ったよりも痛かったのだろう、泣きそうな顔をしていた。


「イテテ、うう…食満くん、私、昼休憩はとっても大事な用があるの。この時間も委員会活動があるなら無理だよう!」

「そうだったのか」


もちろんあきの言う大事な用が何なのかは知っている。今日もしれっとした顔で作業の手伝いを頼めば名残惜しそうに窓の外と留三郎を交互に見ながらも着いてきたのだ。少しは責任感があったらしく留三郎は感心した。


「だから、あの…」

「悪りぃ、わかってるよ。もう一人で終わらせられるからいいぞ。ありがとな、大木」


頭を小突いてから背を向けて作業を再開すると何も言わずにジャリ、と土を踏みしめる音が聞こえた。飛んで小平太を見に行ったに違いない。後で詫びにジュースでも買って行ってやるかと考えていたら静かに隣に誰かが屈んだ。


「やっぱり、今日はちゃんと手伝う。中途半端に投げ出すのはよくないもん」

「…そうか。助かるよ」

「ううん……ふふっ」

「?なんだよ」

「あのね、体育祭の実行委員になって、七松くんとたくさん会えたのも嬉しかったんだけど、食満くんともっと仲良くなれた気がして嬉しかったんだぁ」

「なっ…」


膝を抱えて首を傾げて笑う、破壊力絶大な上目遣いで腕をつつきながらそんな事を言われて留三郎は思わず胸を高鳴らせてしまった。恐ろしい。小平太の前ではいっぱいいっぱいになって挙動不審なのに眼中にない奴にはこの思わせ振りな態度。女って恐ろしい。


「そういうの、他の奴に言うなよ…」

「え?」



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