「じゃあ今日のHRは今度の体育祭の実行委員を決めたいと思いまーす。まぁ誰もやりたい奴いないだろ?って事で体育委員会の奴で決定しm」
「はい!はい!!はい!!!」
「…大木サンどうぞー」
「私!実行委員に立候補します!!」
「よし、よく言ったぞ大木!」
「クラスの鏡だよあきー!」
「はいそこ。体育委員会喜ばない。大木あのね、実行委員選ぶとなると男子も必要なんだよ。男子の顔よーく見てごらん、ほぉら誰もやりたがってねぇだろー?時間掛かるよー?時間掛かると夕方のドラマの再放送間に合わないぞー?だから体育委員会に任せよう。なっ」
「横暴だー!学級委員長の横暴だー!」
「うるっせぇ!俺は早く帰りたいんだよ!今日初デートだぞ!遅れるわけにいかねぇんだよ!」
「委員長、大丈夫!男子は食満くんがやるよ!ほら終了!」
「は?」
「あ、マジで。ならいーわ。はいじゃあ今日はこれで終了!また明日種目決めるから考えといてくれよー!」
「いや、ちょっと待て!俺はやるなんて言ってねぇ!」
「食満くん、頑張ろうね!」
「俺を巻き込むんじゃねぇ!この小平太馬鹿!」
開始五分で散り散りになった教室に残ったのはやる気に満ちたあきと巻き込まれ不運の留三郎。腕捲りをしてぐっと拳に力を込めたあきに留三郎は思わず丸めたノートで頭を叩いた。
「七松くん馬鹿って…えへへ、なんか照れる」
「はあ、そーかよ…ったく、忙しくなるな…」
実行委員として活動するからと言って用具委員長としての務めが無くなる訳ではない。体育祭が終わるまではハードスケジュールになる予感に深くため息を吐くと肩をポンポンと叩かれた。
「食満くん、ごめんね…でも善法寺くんは体育祭で役割があるし、頼める人は食満くんしか…」
みるみる表情が曇っていくあきに留三郎は焦る。一応人選されて俺になったのか。頼られていると思うと悪い気はしないのは男の性。
「ご、ごめんね、巻き込んじゃって。でも私どうしても、実行委員…ぐす、やりたくて…」
「あー!もう分かったよ!ちゃんと実行委員やってやるから泣くなって!な!」
「う、うん、ありがと…!ぐす、だから、私体育祭終わるまでは用具委員会手伝うから!」
「本当か!それは助かる」
日頃から人手不足だ。あきの申し出はこの上なく有り難く留三郎はあきの手を握り喜んだ。小さく首を傾げたあきもすぐに嬉しそうに笑う。こういう所はあきの美徳だ。
「じゃあ早速、今日から手伝うね!七松くんの壊したところはわ、私に任せて…!!」
「……ああー」
「な、何ですか。私別に!七松くんが壊して私が直すとか共同作業っ、だとか思ってないよ!?それに、もしかしたら間近で部活中の七松くんが…!とか…思ってないよ!!?」
「お前の考えていることはよっくわかった」
「な、な、何がわかったの?やだなぁ、食満くんは…ははは」
「言っとくけど、今日小平太ならもう学校に居ねぇぞ。市営のスポーツ公園で練習だっつってたから」
「え……そ、なんだぁ…」
ほら見ろ。
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