「三木ちゃん、散歩?」

「ああ。ユリ子が退屈そうにしていたから」

「へー…私も一緒に行こうかな」

「ああいいぞ。おい隣を歩くなよ、ユリ子が妬きもちするだろ」

「大丈夫。女は妬きもちをすると綺麗になれるから」

「なんだと」


暫くごろごろごろとユリ子の足音が響くだけの中歩いていく。三木ヱ門はちらりとあきを見た。あきは特別楽しそうでもつまらなさそうでもない表情をしている。そう言えばこうして二人きりになるのは初めての事ではないだろうか。いやユリ子も居るんだけども。


「なぁあき」

「なあに」

「お前はどうして忍たまに転入してきたんだ?くのいちではないのか?」


ユリ子の車輪が止まると聞こえるのは風にざわめく木の葉の音だけ。数歩進んで立ち止まったあきは三木ヱ門を振り返る。その顔は美しく、くのいちとして十二分に通じると三木ヱ門は思う。アイドル気質は自分の方が上だけれどとも思っている。


「あれ、言ってないっけ?」

「聞いてない」

「私ね、父様がくのいちに殺されたの。だからくのいちにはなりたくなくて…」

「………」

「という風に設定して入れて貰ったの」

「おい!!!嘘なのかっっ!!?」

「えへー。私はただ忍としての自分を高めたかっただけだよ」

「まったく…人が同情すれば…」

「同情してくれたの?三木ちゃんは優しいねぇー」


にやにやと口を手で押さえて覗き込むあきに三木ヱ門は頭をごつんと拳で殴った。いてて、と痛くもなさそうに頭を押さえるあきに呆れる。この学園にはそんな理由の生徒も居なくないだろうに。こんな事を言っていればいつか痛い目に遭うのではないか。まぁこいつは優秀だから軽くいなして終わりそうだが。


「お前、意外と怨みを買うタイプだな」

「ふふ。意外とって事は…私が清楚で可憐な娘に見えでもしてたの?」

「無いな」

「三木ちゃんは女の子に対してもっと紳士的になりなさい!」

「あきは女の子じゃないだろ」


そうだ。あきはそこらの男より組手も強いし口もよく回る。遠慮や気遣いなど不要だろう。こんな奴に一瞬でも騙された事を悔いているとあきはうんうんと頷いた。


「そうそう、私は同情される様な奴じゃないって事」


だけどそう言って笑った顔に何となく違和感があったのは何故だろうか。







「あっあきちゃーん!お父上殿からお手紙届いてるよぉ」

「小松田さん、バッドタイミング!三木ちゃん騙せる所だったのに」

「あきーーーー!!!!!」




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結局その嘘で入学したと言うのも嘘

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