「あき!ここにサインしろ!」
「げっ、七松体育委員長…嫌です!私は体育委員会には入りません!!」
「何で?」
「私、女だからと見下してこられたり男だからと権力ふるわれたりするの嫌なんです。七松体育委員長はどんぴしゃり過ぎます。あなたの事嫌いです」
「ふーん、女なのに変わったやつだなー」
「ほら、また言う!もー知りません!!」
「あっこら待て」
「待ちません!」
今日も追いかけっこの声が響く。だから言ったのに、と滝夜叉丸はげんなりしながら校庭を見つめた。案の定七松先輩に気に入られたあきはあれから毎日あんな感じだ。こうなる事がなんとなく見えていたのだ。だから嫌だったのに…。
「…ん?嫌って何だ…」
「滝夜叉丸。そんな所で突っ立っていると邪魔だ…あ、あきか」
「田村三木ヱ門。相変わらず私の美しさが妬ましいからと一々文句を付けてくるな」
「誰がだ。それよりあれ、助けてやらなくていいのか?」
「いいんだ。自業自得だから」
「でも…」
「滝ちゃーーーん!!三木ちゃーーーん!!!!この人どうにかして!!!」
「ぉがッ!!!」
後頭部に衝撃が走ったかと思うと地面に顔から着地した。頭が重い。三木ヱ門の「とりあえず降りてやれ」と言う言葉が聞こえて滝夜叉丸は振り払う様に起き上がった。あきは華麗に飛び跳ねて着地する。
「何する!!私の美しい顔に!!!」
「どーどー。大丈夫、相変わらず美しいから」
「そうか」
「あきお前、喜八郎と滝夜叉丸の扱いの差が目に見えるぞ」
「うーん、その身のこなし、やはりうちに欲しい!!」
いつの間にやら輪に入っていた七松先輩に一堂ギョッとした。すでにあきの腕を掴んでいる。捕まった。
「離してください!!あと私、筋肉質な人嫌いなんです!!七松委員長はある意味理想の人です。近寄らないで!!」
「ん?変わった告白をされてしまった。気持ちは嬉しいが悪いな!私女に興味ないから」
「こ、告白してないのにフラれた…。屈辱…!!」
「さーそれより学園長の所へ行こう。体育委員会所属を伝えないとな!」
「いーやーでーす!!もう!!!滝ちゃん!!」
「私には無理だ。いくら優秀で美しくても!」
「いい加減ウザくなってきた。三木ちゃんー!」
「え、あ…そ、そうだ。中在家先輩に会いに行け、図書室だ」
「よし、ありがと!七松委員長、なかざいけ先輩に会いに行きましょう。これからお世話になるのでご挨拶に行かねばなりません」
「律儀だなー。わかった!」
三木ヱ門の言葉の意図を何となしに読み取ったあきが七松先輩の手を引く。逆にあきの手を引きびゅんびゅんと走り出した七松先輩に着いていくあきを滝夜叉丸と三木ヱ門は見送った。しかしよく着いていけるものだ。普通の女子なら体が浮いていてもおかしくはない。
「ふふ…見たか!お前に出来ぬ事を私は解決してやった!」
「ぐ、私にだって助言くらいできるわ!!解決を見送っただけだ!」
「ふん!助言も出来なかったくせによく言う!!」
「こうなったら決闘だ!互いの自信のあるもので!!」
「良いだろう!」
二人の喧嘩は日が暮れるまで続く。
「なかざいけ先輩!!この人どうにかしてください!!」
「ぼ、僕は不破です…」
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