「…はい、他に質問はありますかー?」

「ないでーす!ごきょうりょくほんとーにありがとうございましたあー!!」


ペコリと皆で頭を下げると、パン屋のおじさんは皆に一つずつパンをくれた。キャッホウ!もしかしたらくれるかもと思って愛想よくしといてよかったー!!ルキルキしながら学校までの道を歩いていると、雷蔵君が私を見て笑った。


「ふふ、あきちゃん嬉しそうだね」

「う、うんー!わたしね、メロンパンだーい好きなの!!」


雷蔵君に話しかけられて少しビクッとしてしまった。三郎君が恨めしそうにこっち見てるから私に話しかけないでくれませんかね?!そんな事言ったらますます三郎君からいじめられるから言わないけど。まぁ今はメロンパンがあるから私もご機嫌だ。


「だーいすき…」

「う、うん…?」


今の会話に何かひっかかる所あったか!?三郎君がぼそりと呟いて黙ってしまって何か変な空気になった。


「…あきはさ、好きな奴居ないのか?」

「えっ!?す、好きな人!?居ないよー!」

「じゃ、じゃあさ、この中の三人だったら一番は誰だ!?」

「え゙っこ、この中で…?」

「おう!」


ハチ君がそんな質問をするから皆の視線が一気に私に集まる。おいてめぇ何てことしてくれる!!しかもこの中で!?どなたも遠慮したいんですけど!?


「い、いや〜私この中じゃ…」

「あ?誰も嫌だと言うのか?あきのくせに」

「ちっちちちちち違うよ!!恥ずかしいし言いたくないだけ!!」

「大丈夫、他の人に言ったりしないよ?」

「ら、雷蔵君…!」


その優しさ今は必要ねぇわ!!!心なし三人にじりじりと詰め寄られて冷や汗が流れる。ど、どうすれば…!三郎君は嘘でも言いたくないしハチ君はブスって言われたのまだ根に持ってるから選びたくないし雷蔵君が無難か…?いやまさか雷蔵君選んだら三郎君が恐いし無理だ選びたくない。ど、どうすれば…!!!半泣きで後ずさっているとぽすっと誰かに当たった。


「あ、す、すいませ…うわあっ!?」

「ハハッ、久しぶりに見たのぉ!もうこんなに大きくなっとったか!!」

「お、大木せんせー!!」


ひょい、と持ち上げられてビックリして見るとにこにこ笑顔の大木先生がいた。大木先生は私が通っていた保育園の先生だ。皆がジッと見てくるのではっと思い付いた。そうだ!


「わたし、大木先生と結婚する!大木先生がすきーー!!!」

「わはは!そう言えばちいちゃい時はそんな事も言ってくれとったな!まだ有効なのか?」

「うん!だからせんせー!!ちゃんと待っててね!」

「おーありがたいな!お前ら学校だろ?ほれ早く戻りなさい」

「はーい!さよーならー!!」


ぶんぶんと小さくなっていく先生に手を振った。大木先生は優しいし面白いしかっこいーし、そう言えば昔から好きだった。もういっそ本当に運命の人大木先生になんないかなー。年の差なんて愛があれば乗りこえられるのよってママのCDで歌ってたもんな〜。あ…でも私の運命の人は嫌いな人の中に居るんだった…じゃあ大木先生は違うかぁ。この三人の中にもしかしたら……。げんなりしながら皆を振り返ると、皆して微妙な顔をしていて肩がビクッと跳ね上がった。


「な、なに、どうしたの…?」

「…あんなのは認めん」

「そうだ!おっさんは恋愛たいしょーじゃねぇんだ!そんなのただのアコガレだ!げんそーだ!!」

「ハチ、どこで覚えてきたの」

「親戚の姉ちゃんの漫画」

「とにかく、あきに選ぶ権利を与えただけでも腹が立つのに選ばれなかったとなるとはらわたがにえくりかえりそうだ」

「そ、そんな横暴な…!!!」


三郎君がそんな事を言うから、普段なら泣いて逃げるんだけど大木先生に会った事とメロンパンを貰えたことで妙に気の大きくなっていた私は反論してしまった。


「あ、あのねー!もし私がこの中の人を好きになったとしても、三郎君だけはぜーーーーっっったいないから!!!!」

「あ゙ぁ!?」

「ぐっ、こ、恐くなんかないもんーーー!!!脅したってダメだもん!三郎君のバーーカ!!!!」

「…上等だ。一から躾てやる……」

「ぴっ!!」


三郎君の表情に感情の一切がなくてぶるっと悪寒が走った。し、しまった、ちょっと言い過ぎた…!!何メロンパンごときで三郎君に歯向かう勇気出しちゃってんの私のばか!!!


「さ、ささ三郎君嘘だよごめんね…!」

「許さん」

「ほ、本当は三郎君の事が一番好きだよ!大好きだよっ!!ちょっとかなり物凄い恐いだけで…!!!」

「許さん」

「な、なんだよー!謝ってるのに!?ら、雷蔵君!!!」

「ごめんね。三郎も暴力は振るわないと思うから…落ち着かせてやって!」

「えっ」

「俺達は先に学校戻ってるからさ、仲直りして来いよー!」

「ちょっ、ハチ君!雷蔵君!お、置かてかないでよおおおおおお!!!!??!!」


手を挙げてすたこらっと走っていってしまった二人を見つめる。ち、チクショー!!!絶対二人とも三郎君の相手するのめんどくさがって私に押し付けてった!!!!!ミシッ。と肩を掴まれる。恐る恐る振り返ると三郎君が能面の様な顔で私を見ていた。そのまま腕を引かれて空き地に連れられるとまるで死角のような木の影に連れてこられた。こ、ここここっここ、殺される…!!


「ご、ごごごごめんなさい!!!何でもするから許してください!!!!!!ころ、殺さないでくだ……!!あ、あれ…三郎君…?」


恐ろしすぎて必死にいのちごいしていると三郎君がゆらゆらと近付いてくるから手を顔の前でかざしてギュッと目を瞑った。でもいつまでも何も起きないから不思議になってゆっくり目を開くと目の前に三郎君の顔が。


「うぴっ!!!」

「…お前は、私がきらいなのか……」

「さ、三郎君…」


ぎゅうっと抱き付かれて私の肩に三郎君の顔が押し付けられる。あ、あれ…?今のは「本当に何でもするんだな?なら学校一周腹踊りしながら回ってこい」とか言う場面ですよ三郎君!どうしたんだ…!?


「……ぐす」


ま、まさか…


泣 い て る !?




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