「あきちゃん、授業のペア一緒にやろうよ」

「ら、雷蔵君…」

「駄目かな?」

「う、ううん。いい、けど…」


腰の低い物言いに断るに断れなくて思わずいいと言ってしまった…雷蔵君は、優しいんだけど三郎君と仲がいいから嫌いだ…よかった、とにこにこ笑う雷蔵君に引きつった笑みを返した。


「皆ペア決まったら商店街のどこを取材するか決めてくれ。先生が電話しておくから決まったら行って来るように。時間は守れよー」


今日の社会は商店街のインタビューで、クラスで商店街マップを作るんだけど…うーん、どこにしようかなぁ。


「僕達も決めよっか。どこにする?」

「うーんとね、私はパン屋さんかケーキ屋さんがいいな!」

「いいね。どっちにしようか?パン屋さんもいいけど、ケーキ屋さんもいいし…うーん」


あ、しまった。雷蔵君は迷い癖があるから私がちゃんとしなきゃな…めんどくさい…。


「雷蔵。どこ行くか決めたか?」

「さ、三郎君…!ハチ君も…」

「あき、お前雷蔵に迷惑をかけるなよ…」

「は、ははははいいぃっっ!!!」


雷蔵君を呼ぶ声に思わず見構える。ほーら来たよ!私が雷蔵君と話してると絶対来るかんね!!!こいつ雷蔵君好きすぎだろ恐いんだよーー!そんなに雷蔵君心配ならペア組めばよかったのにさぁ…!!


「あきちゃんは迷惑かけたりしてないよ。むしろお前が迷惑なんだよ」

「ら、雷蔵ひどい!」

「まぁまぁ。で、どこ行くか決まったのか?」


うは!珍しく三郎君が雷蔵君に注意されて慌てていたから心の中で噴き出した。そうそう。三郎君の唯一の弱点は雷蔵君だからたまにこういう所も見られてかなり気分がいい。ニヤニヤとしてしまう口を両手で隠していると何故か三郎君にギンッとこっちを睨まれた。えっ、バレちゃった!?


「お前いま笑ったろう」

「わ、わわわわ笑ってないよ!!?!!??」

「僕達はパン屋さんかケーキ屋さんがいいなぁって言っていたんだ。ハチ達は?」

「いや、三郎が雷蔵の近くがいいっつーからまだでさ…」

「嘘つくなコラ。その手を離してみろ」

「や、やだよーーー!!!イタタタ!!三郎君腕がミシミシ言ってる!!!もげる!!!!」

「言うこと聞かない腕なんかもげてしまえ」

「ギ、ギャーーーー!?!!???!!雷蔵君助けてーー!!!!」


何恐ろしい事言ってんのこいつ!??もう腕は口から離れてるのにミシミシと腕を握り潰してくる三郎君に、半泣きになりながら雷蔵君に助けを求めると私と目が合ってにこっと微笑まれた。


「三郎は本当にあきちゃんが好きだなぁ。そんなに仲のいい子が出来て僕は嬉しいよ」

「よせよ雷蔵。私が好きなのは雷蔵だけだ」

「こ、この状況見てなんでそうなるんだよーーーー!??!!?うわーん!!!」


雷蔵君を嫌いな最大の理由は、三郎君にひいき目がありすぎて笑顔でいじめられてる私を見てくる所だ。こ、こいつやっぱり嫌い…!!!優しいけど全部帳消しだよ!!むしろマイナスだよ!!!!とうとう泣き出した私に三郎君はにやりと口角を上げた。三郎君は私を泣かせて喜ぶとんだドSだよ!!!!!!!泣きながら抵抗していると急にドンッと背中を押されて私は三郎君に向かって吹っ飛んだ。


「はいはい、遊びはそれくらいにして早く行こう。僕達二班でパン屋さんもケーキ屋さんも回ろうよ」

「おほー、珍しく雷蔵が迷ってない!」

「…ひ、ひい…!……あれ?」

「………」


吹っ飛んだのは私だけではなく三郎君もで、何がどうなったか私は三郎君のおなかの上にまたがっていた。それに気づいて慌てて逃げようと思ったけど三郎君は固まっている。あれ?どうしたんだろ……も、もしかして…この体勢が弱いのでは!?期待にドキドキしながら三郎君を見た。手はわきわきさせて。


「さ、三郎君……日ごろのうらみ、晴らしていただこうーーー!!!!!!」

「お、おいっ!?」


両手をあげて飛びかかると三郎君は珍しく焦っていた。やっぱり!!!三郎君はこちょこちょに弱いんだあーーーー!!!!!ガバリと体をくっつけてくすぐると、三郎君は全然ピクリともしなくて……あれ??効いて…ない…だと…!?ガッと頭を掴まれて私は青ざめた。


「さ、三郎君っ…!!」

「ふ、ふ…あき残念だな。私にこちょこちょは効かない」

「えっ!!?!さっき焦ってたじゃん!!」

「それより日ごろのうらみって何だ?言いたい事があるならハッキリ言ってみろ、あ?」

「すすすすすすすすいませんでしたーーーー!!!!!ぎゃわははははやめてはは本当にうわはははは!!!!」

「逆らったらどうなるか体が反射で覚えるまでやってやる」

「ギニャーーーー!??!!!?」



結局けいせいぎゃくてん?されて三郎君にまたがられて呼吸できないほど笑っていると、突然三人共気まずそうに私から目線を反らして終わった。な、な、なんなんだよ…。






「(なんかエロすぎる…)」

「(普段の阿呆とのギャップがありすぎて…)」

「(ちょっとドキドキしちゃった…あれ?これって恋?)」




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