今日の体育はポートボールで、私はゴール役だった。
あーあ、私も試合したかったなぁー。ゴール役って動けないしつまんないよー。勉強は嫌いだけど体育は好きだ。なのに見てるだけなんだもんなぁー。あーあ、こんなの運動嫌いな子がするポジションなのに…。
「おいあき!」
「え?ンギャ!!!」
「試合終了ー!」
誰かに名前を呼ばれて顔を上げると目の前にボールが迫っていて私は踏み台から吹っ飛んだ。それと同時に試合終了の笛が鳴る。い、痛い…!!!!!ものすごくいたい!!!!!ちょっと先生私を無視して号令かけないでよ!!?だけど誰も助けに来てくれなかったので震える体を何とか立たせた。もうやだこのクラス嫌いだよお…!!!クソーーー!!!!!
「おい!お前ちゃんとやれよー!!」
「ビクッ!は、ハチ君…」
授業が終わって負けた私達のチームが片付けをしていると後ろからガシッと肩を掴まれた。彼も私をいじめる恐ろしい奴だ…。
「お前があのボールをちゃんと取ってれば俺達の逆転勝利だったんだぞ!?」
「だ、だってさぁ〜!ゴール役ってつまんないんだもん!!私だってゴールじゃなきゃちゃんとやったもん!!」
「お前なぁ…一回決まった事は最後まで責任持ってちゃんとやれ!」
「う、うう…!」
ハチ君は声が大きくて恐い。何で毎日毎日こんなに怒鳴れなきゃならないのか…。他の女子からは「ハチ君って明るくて優しくて思いやりがあってステキよねー」なんて聞くけどあんなの妄言だ。こいつは自分の決めた事を押し付けてくるおらおら系だ。
「おい、聞いてんのかよ」
「き、聞いてるよ!全部私が悪いんでしょ!!でもつまんないもんはつまんないんだもん!だったらハチ君が私の代わりにゴールやってくれればよかったんだ!!」
「お前なぁ…それは公平に決まったろ!」
「多数決で鶴の一声と言わんばかりに三郎君が意見したのが公平だって言うんならね…」
三郎君の一言に逆らえる人なんて居ないの知ってるくせに!現に反論した私にハチ君は目を泳がせた。こいつー!!
「ま、まぁ今日はアレだな…そうだ、次の体育もポートボールだったら俺ゴールやるからさ!」
「えっ本当に!?」
「おう!やくそくだ!」
パッと素早く右手の小指を出してくるので、嬉しくて私も小指を絡めた。なーんだ良いところもあるんだなぁ!
「うれしーな!絶対だからね!いざってなってやっぱナシは駄目だからね!」
「お、おう…!おまっ…」
「?」
嬉しくていつもは恐怖で青ざめてる顔をニコニコさせるとハチ君は小指にギュッと力を込めた。なんだろ?私も小指をギュッギュッとするけどハチ君は私を見たまま固まっている。首を傾げて名前を呼んだら凄い勢いで顔を反らされた。ンだよ感じ悪いな!!
「何だよー!何でそんな反らすの!?」
「う、うるせー!のぞきこんでくるな!」
「えー、何でですかぁー。もっとやってやる!」
反らした方に回って見るとどんどん逃げるからくるくるくるくるとハチ君の顔を追って遊んだ。な、な、何この感覚…!いつもやられる側だから初体験!たまんないね!!
もしかして運命の人ってハチ君かなぁー。声が大きくて怒鳴ってくる所は恐いけど…こんな一面もあるなら可能性はじゅうぶんだ!ニヤニヤとハチ君を追いかけ回していると突然指を振りほどかれて私の体は+遠心力で結構吹っ飛んだ。
「い、いいい痛い!!!ちょっとテメーなにしてくれる!!」
「う、うるせー!止めろって言ってんのにやめねぇからだ!この性格ブス!!」
「な、な、な…!!!!!!!」
ぶ、ぶす…!ぶすって言われた!!!驚いて立ち上がれないまま目を見開いているとハチ君は叫ぶように続ける。
「お前は口悪ィし止めろって言って止めねぇし女じゃねぇ!!女ならもっと女らしくしろー!」
「ひ、ひ…ひどいよおーー!!うわぁーーんハチ君なんか大っ嫌いだあーー!!!!」
「だ、だいっきらい…!?(ガーン!)」
「おい、何だどうした」
「げっ三郎君ぷぎゃっ!!」
ショックで泣いてハチ君から逃げようと体育館の出口へ走っていると何故か戻ってきた三郎君と鉢合わせしてしまった。思ってる事が顔に出てしまって嫌そうな顔をすると顔面を三郎君の肩に打ち付けられた。痛い!!そして頭を掴まれて離してくれない!!!!!恐い!!!!!
「ハチに泣かされたのか?何された?」
「い、いやあのな…!」
「三郎君聞いてよ!ハチ君が私の事をブスって言うんだもん…!ひどいよー!女の子に言っていい言葉じゃないもん!!」
焦るハチ君の声にムッとして私は三郎君に泣きついた。ていうか頭離してくれないかな三郎君。本当はこのまま泣いて逃げたいんだけど今すぐ離れたいんだけど。でも離してくれないから仕方なく三郎君の肩に顔をくっつけて居ると頭をうりうりされた。
「ふーん…ハチがそんな事女子に言うなんておかしいな。もしかしてお前…やめておけよこんな阿呆」
「それ私の事だよね!?」
「ったく…そんな事言って三郎はやめる気ないくせにな!」
「何の事だ。私はこんなちんちくりん爪の垢ほども興味ないな」
「俺だってこんな心の狭いヤツは願い下げだ!」
「ふ、二人して酷すぎる…!」
だけど三郎君とハチ君は私の事を忘れて言い合いを始めたのでその隙に逃げさせてもらった。心が痛い。テメーらなんかこっちから願い下げだっつーのおお!!!!!
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